比、南沙諸島周辺にブイ設置
Japan In-depth / 2022年5月26日 7時0分
★中国海警局船舶による妨害事例
これまでフィリピンが実効支配する最大の島であるパグアサ島周辺海域には中国やベトナムの漁船、中国海警局艦船などが異常接近して「フィリピンの領海に侵入」してきた事案が複数報告されているという。
また2021年11月にはアユンギン礁(第2トーマス礁)にあるフィリピンが座礁させた艦艇に駐在するフィリピン軍海兵隊兵士らに生活物資を補給しようとしたフィリピンの一般船舶2隻に対し、中国海警局船舶が接近して放水銃で礁への接近を妨害し、2隻は礁に接近できず引き返すような実力行使の事例も実際には起きている。
この時はフィリピン政府が中国に対して厳重な抗議を行ったが、中国側は「自国の管轄内での法の執行」と放水による妨害を正当化するのみだった。
★対中警戒だけではない航法ブイを強調
今回のフィリピンによる航法ブイの設置について比海保は「この航法ブイには特殊な係留装置が備えられ、夜間のランプ、衛星経由のモニターシステムが搭載され、ブイが収集したデータはマニラの海保本庁に送信できるようになっている」と高性能の装置が装備された航法ブイであることを強調。
そのうえで「この航法ブイは周辺海域での一般商船などの航行安全、海難事故の際の捜索救難、海洋の環境保全に資することができる」として対中警戒だけが任務ではないことも明らかにして関係国の理解を求めている。フィリピン人権委員会はブイや警戒監視拠点の設置に関して「いかなる国もフィリピンの漁民による自国権益のある海域での操業を妨げることはできない。今回の航法ブイ設置はフィリピンが関係周辺国に対して自国権益を保護し、自由の島を守り抜くという強い意志を表したものである」とその意義を強く示した。
写真)選挙前の最後の選挙集会で支持者に訴えかけるボンボン・マルコス候補 22022年5月7日フィリピンマニラ パラニャーケ
出典)Photo by Ezra Acayan/Getty Images
5月9日の大統領選投票で開票率99%の時点で次期大統領への当選を確実にしている独裁者マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア(愛称ボンボン・マルコス)候補はまもなく任期が切れる現職のドゥテルテ大統領による対中融和策を継続する可能性が高いといわれている。
だが、それはあくまで経済面での融和であり、南シナ海の領有権問題は「表向きは強硬だが、その内実は現状維持」という、いってみれば優柔不断な立場にドゥテルテ大統領は終始してきた経緯がある。今回の航法ブイや警戒監視拠点の設置がフィリピンの新たな対中姿勢を示すものなのか、今後のボンボン・マルコス氏による新政権の舵取りが内外からは大きく注目されている。
トップ写真)南シナ海沖での米比軍事演習(2022.3.31)
出典)Photo by Ezra Acayan/Getty Images
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