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EU、露産石油輸入禁止は諸刃の剣

Japan In-depth / 2022年6月4日 11時0分

今後の焦点はEUにおける消費の約4割を占めるロシア産天然ガスだ。ポーランドやバルト3国は早期の禁輸を主張するが、ドイツなどは慎重な姿勢を崩していない。





一方、ロシアはポーランドやブルガリアの他オランダへのガス供給を停止し、欧州への揺さぶりをかける。ロシアとのせめぎ合いでEU諸国が団結を維持できるか。EUは正念場を迎えている。





◇再エネに注目





こうした中でEUはロシア産化石燃料への依存から脱却することが急務だと認識しており、そのためには天然ガスの調達先の多様化や太陽光や風力を柱とする再生可能エネルギーの導入加速化を図る方針だ。EU欧州委員会は化石燃料の脱ロシア依存を2027年に達成するための「リパワーEU」計画をまとめた。その中で脱ロシア依存の達成目標期限を2027年に設定し、再生可能エネルギーのさらなる導入のために3000億ユーロを投じる方針だ。





太陽光パネル発電では、域内で新築される住宅にパネルの設置を義務付ける。公共の建物は2026年から、民間の建物は2029年から適用される。風力発電では、現在約9年かかる認可手続きを短縮する。





燃料電池や水素燃料についてはEUで「購入共同体」などを結成して、より安価な調達を目指す。





EUは2030年までに再生可能エネルギーの割合を45%にまで引き上げることを目指している。





EUは必要な資金についてはEU予算や排出権取引による収入からの充当を検討しているが、ドイツ℉などの産業界は実現の方法がまだ詰められていないなどと指摘している。





◇トルコが難色





NATOはその70余年の歴史において必ずしも一枚岩ではなかった。特に「自国第一主義」を唱えてトランプ米大統領が米国の利益を最優先した、2010年代後半には亀裂が表面化した。トランプ氏は欧州諸国に対して国防費を国内総生産(GDP)比2%以上の水準にまで引き上げるよう要求。聞き入れられない場合の米国のNATO脱退さえほのめかしたことさえある。こうしたが状況をフランスのマクロン大統領ははNATOの「脳死状態」と形容し、嘆いてみせた。





2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアのプーチン大統領の希望的観測とは裏腹にNATOでは米欧間、欧州諸国間で不協和音は聞かれず、一致団結を維持してきた。





ところが、NATO加盟国であるトルコはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に難色を示している。トルコはテロ組織と指定するクルド人武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)を北欧2カ国が支援していると主張。クルド人はトルコの人口の約二割を占るが、独自の言語、文化を有し、分離独立を目指している。PKKについては、米国とEUはテロ組織に指定している。





トルコの真意は加盟の阻止ではなく、安全保障上の理由から米国に拒否されているF35戦闘機の購入を実現することだとの見方もある。





◇利敵行為?





EUにおける対ロ石油禁輸の問題は一応決着をみた。今後、注目されるのはトルコが北欧2カ国のNATO加盟への反対を取り下げるかどうかという点だ。もしトルコが反対を貫くのであれば、NATO内の団結は損なわれ、かえってロシアを利する可能性もあり、NATOにとって正念場だ。





(了)





トップ写真:スロバキアのスロブナフト製油所。ドルジバパイプラインにてロシアからの石油を精製している。(2022年5月31日、スロバキア・ブラチスラバ) 出典:Photo by Zuzana Gogova/Getty Images




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