突如、再び対台湾政策を変えた米国
Japan In-depth / 2022年6月10日 15時55分
他方、ワシントンは「米中和解」で、互いの高関税を引き下げ、両国の経済成長を目指したのではないだろうか。
仮に、現バイデン政権が「オバマ政権3.0」だとしよう(実際、一部の旧オバマ政権スタッフがバイデン政権入りしている)。もし、そうならば、中国との“協調”を目指しても不思議ではないだろう。
以上の理由で、ワシントンは、1度取り下げた「1つの中国」政策を復活させ、同時に、「米国は台湾独立を支持しない」と以前の主張を繰り返したのではないだろうか。
蔡英文政権としては、5月5日から25日までの約3週間、米国に「台湾独立」の裏書きをしてもらった。しかし、すぐに梯子を外された観がある。
ここで、国際法から見た台湾の地位についてごく簡単に触れておこう。
まず、1943年12月の「カイロ宣言」(台湾の中華民国への帰属を謳う)は、その“草案”は残存するけれども、“正文”(日付の入った3首脳の署名入り文書)は世界中、どこにも存在していない(d)。
カイロ会議では、チャーチル英国首相と蒋介石中華民国総統が、第2次大戦中の「ビルマ戦線」と大戦後の香港返還を巡り対立したため、署名には至らなかったという。
中国共産党は、しばしば「カイロ宣言」をもって、台湾の領有権を主張するが、その根拠は希薄である。
他方、第2次大戦後、日本の敗戦に伴い、マッカーサー太平洋軍司令官は、「第1号指令」で蒋介石に台湾の(領有ではなく)「統治権」を委ねた。
1949年12月、「国共内戦」に敗れた国民党が台湾へ逃げ込んだ。そこで、期せずして、同党政権(「国民政府」)は台湾を支配する。そのため、中華民国が台湾を領有したという説が唱えられるようなった。
ところで、1970年代初頭、「米中和解」に伴い、米国は中国に対し、「台湾は中国領土の一部」として“認識”している。
当時、誰が見ても実態は「2つの中国」(中華人民共和国と中華民国)にもかかわらず、大陸と台湾の両政府は、「1つの中国」(大陸+台湾)というフィクションを掲げた。米国も両政府の主張を受容したのである。
その後、台湾の「民主化」が深化し、台湾側は「1つの中国、1つの台湾」を謳うようになった。もしかすると、今日、米国の「1つの中国」政策はすでに“賞味期限切れ”になっているのかもしれない。
<注>
(a)『米国務省』「バイデン政権の対中アプローチ」
(https://www.state.gov/the-administrations-approach-to-the-peoples-republic-of-china/)
(b)『米国務省』「米国の台湾との関係」
(https://www.state.gov/u-s-relations-with-taiwan/)
(c)『ドイツの声』「尋常ではない2つのでき事 ブリンケンのスピーチがバイデン・習近平会談を示唆?」(2022年5月30日付)
(https://news.creaders.net/us/2022/05/30/2488876.html)
(d)『台湾國』「中華民国の陳水扁・呂秀蓮正副総統はいずれも中華民国を詐欺集団と公言した(新ファイル)」
(https://www.taiwannation.com.tw/topic010.htm)
トップ写真:尹錫悦韓国大統領とダグラス・エムホフ氏(カマラ・ハリス米副大統領の夫)2022年5月10日、韓国・ソウル 出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images
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