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ネパールに接近する中国

Japan In-depth / 2022年6月13日 18時0分

 


ネパールのIPP協会が設立した「ネパール電力取引所」は今年1月初旬、インドの電力関連の取引所であるマニカラン電力取引所とエネルギー取引の覚書に調印している。


 


マニカラン電力取引所はネパール電力取引所の株式15%を取得することでも合意しているという。ネパール政府は、この提携を認める場合、法制化が必要としており、その実現には時間がかかりそうだが、実現すると、NEAの電力取引独占に幕が下りる。民間は電力取引の自由化が図られると、インドだけでなくバングラデシュなどへも電力輸出ができると期待する。


 


NEAの発電設備容量自体も、456MW(45.6万㎾)のアッパータマコシ水力発電プロジェクトが2015年の大地震などで遅れたとはいえ、昨秋から本格稼働し、大幅に拡大した。このプロジェクトは、チベットを起源とするネパールのスンコシ川の支流であるタマコシ川の河川流を利用する流れ込み式の発電形態(日本は乾季も発電が安定する貯水式を中心に支援してきている)。


 


NEAは、7月初めから11月末まで余剰電力を売電可能との声明を出した(英字紙カトマンズ・タイムズ6月3日付電子版)。同紙によると、NEAは昨年11月、インドの中央電力規制委員会によって規制されている上場企業のインドエネルギー取引所から取引許可を取得し、初のスポット売電を実施。6月2日には同取引所で2度目のスポット売電を行い、約1千万ネパール・ルピー(約1,070万円)の収入を得たという。また、NEAは5月に、次の雨期の余剰電力200MWの長期売電に関する入札を行ったという。


 


ネパールの貿易収支は、輸出が1,411.2億ネパール・ルピーであるのに対し、輸入が1兆5,398億ネパール・ルピーと大変な赤字。まだ、少額とはいえ、売電収入は貴重な収入源となる。IPP協会は、輸出機会を失い、発電電力を無駄にしないためにも、民営化推進を訴える。


 


中国との関連では、習近平国家主席が2019年の同国公式訪問時に「一帯一路」下の鉄道建設での調査を持ちかけている。


 


ネパールの1989/90~2020/21会計年度における直接投資の累計額が多いのは、中国(香港、台湾を含む)がトップで1734億ネパール・ルピー(全体の48%)、次がインドの985億ネパール・ルピー(同27%)。両国はネパールの発電所建設に関与している。インドは、IT絡みからなのか中国製発電設備使用の発電プロジェクトへの関与には神経を尖らせているとされる。


 


英国放送協会(BBC)は2月初旬、中国が国境を越えて侵入しているとの報告書をネパール政府がまとめたと報道した。ネパールは対中けん制も忘れない。


 


国境を越えた地域間の電力貿易は、欧州連合(EU)で一般化している。常設事務局をカトマンズに置く南アジア地域協力連合(SAARC)でも世界銀行などの働きかけでその可能性が検討され始めているほか、ラオスの電力輸出が目立つ東南アジア諸国連合(ASEAN)でも域内での電力融通が検討課題に挙がっている。


 


写真)多くの人で賑わうナイトマーケットの様子 ネパール・カトマンズ 2020年1月30日


出典)Photo by Giulio Origlia/Getty Images


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