金正恩、党中委総会で大幅人事刷新、米韓とは対決姿勢
Japan In-depth / 2022年6月19日 18時2分
労働新聞は5月14日、金正恩総書記が街で流通する商品の品質が悪いと激怒し、党幹部らに猛省を促したエピソードを紹介したが、これなどは飢餓にあえぐ国民にとって切実な食料問題ではなく歯磨き粉を問題視する頓珍漢ぶりで、「裸の王様」を自ら暴露しているようなものだ。
党中央委員会総会が終わるやいなや、金正恩は6月12日に、これまで1度も開かなかった書記局会議を開き、幹部の職権乱用と官僚主義を撲滅しろと指示した。しかし、権力乱用と官僚主義の見本は金正恩自身なのだ。この「ネロナムブル」的指示も自身を「裸の王様」にした幹部たちへの怒りから出た行動だと推察される。
■ 金正恩に残された突破策は「核による脅迫」
今回総会では、今年上半期の国家政策の総括が行われ、対外分野で堅持すべき原則や今後の戦略の方向性も示されたというが、具体的内容は明かされなかった。
また北朝鮮国内で感染拡大が続く新型コロナウイルス対策も論議され、金正恩は地域ごとの封鎖に重点を置いた防疫から「封鎖と感染撲滅闘争を並行する新たな段階に入った」と評価したが、黄海道などではコロナだけではなく腸チフスと見られる新たな伝染病が蔓延し始めている。
四面楚歌状態の金正恩には、新型コロナウイルス拡散による体制の乱れと経済苦境で難局を外交で切り開く余裕はなくなっているようだ。残された突破口は、核の小型化とミサイルの多弾頭化、精密化の完成による米韓への脅迫政策だけだ。それを明確にしたのも今回中央委員会総会の特徴だと言える。
金正恩は総会で、「北朝鮮周辺の安全保障環境が非常に深刻だ」と指摘し、国防力強化のための目標達成を前倒しして急ぐべきだと強調した。金正恩はすでに年初からミサイルを連射し、7回目の核実験を準備するなど軍事的挑発で正面から対抗する姿勢を鮮明にしている。朝鮮半島情勢は2017年の緊張状態に再び戻りつつある。
トップ写真:ソウル駅のテレビモニターで金正恩総書記を見るソウル市民ら (2022年6月5日、韓国・ソウル) 出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images
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