「習派」の退潮と「反習派」の伸張
Japan In-depth / 2022年6月20日 0時2分
ところが、この記事がまもなく削除された(b)。
突然、同記事が、中国のSNS上で、共産党の“検閲対象”となり、中央規律検査委員会HPに掲載された原文まで削除されている。
6月14日、米国在住の評論家、秦鵬は、「中央規律検査委員会による『李克強が野心家でそれを隠すのが上手い』と罵った記事が、本日、各種ツィーターやWeChatでバズり、同委員会の元記事が404(エラーメッセージ Not Found<未検出>)になった」とつぶやいた。
6月1日に掲載されたこの記事は、海外メディアの注目を集めていた。だが、同月14日、突如、中国本土のソーシャルメディアに飛び火したのである。
おそらく「習派」の人間が李首相を叩くために同記事を掲載したが、「反習派」によって、元記事が削除された可能性がある。この経緯を見れば、「習派」の退潮は明白ではないだろうか。
一方、人事面からも「習派」の退潮が窺える。
6月9日、政治評論家、陳破空の分析(c)によると、ここ数日、中国共産党の省・大臣クラスの高官が多数、調査・処分を受けたが、失脚した幹部は、主に習主席の部下だという。
6月1日、中央規律検査委員会は、広東省人民代表大会常務委員会副主任の陳如桂が重大な規律違反で失脚したと発表した。
2017年、陳如桂は深圳市長に就任したが、当時は、習主席が権力の絶頂期にあった。陳如桂は必ずしも「習派」とは言えないが、習主席に近かったのは間違いない。
また、別の「習派」幹部も調査を受けている。
中央規律検査委員会は江蘇省党委員会元副書記、張敬華を「個人の出世のため、経済データを改竄し、法律に反して市場経済に干渉した」等の容疑で有罪とした。陳破空は「経済データを改竄し、市場経済に干渉した」という容疑自体、極めて珍しいと喝破した。
その他、 5月31日から6月2日までの3日間で、遼寧省人民代表大会常務委員会の孫国相副主任と上海市検察院の張本才主任が失脚した。また、海南省三亜市委員会の童道馳前書記が「収賄とインサイダー取引」の罪で執行猶予付きの死刑判決を受けた。更に、寧夏回族自治区政治協商会議の李沢峰元副会長は1年間の保護観察と政治職務解任を言い渡されている。
<注>
(a)『中国新聞センター』
「二つの中央が形成される、中央規律検査委員会は列をなして李克強を大いに罵倒: 同委員会の雑誌は李斯と李林甫という大宰相を学者型官僚として描き、名門校の卒業生は『洗練された利己主義』である主張」(2020年6月7日付)
(https://chinanewscenter.com/archives/32846)
(b)『中国瞭望』「中国規律検査委員会が李克強首相を批判した文章、公式サイトから元記事が削除される」(2022年6月14日付)
(https://news.creaders.net/china/2022/06/14/2494169.html)
(c)『中国瞭望』「情勢激化で、反習派が動き始めた」(2022年6月9日付)
(https://news.creaders.net/china/2022/06/09/2492577.html)
トップ写真:人民大会堂での2022年北京冬季オリンピックおよびパラリンピックへの貢献を称える式典に臨む、習近平国家主席と李克強首相(2022年4月8日、中国・北京) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images
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