「スー・チーさん刑務所移送に反対」
Japan In-depth / 2022年7月1日 23時0分
「5項目」には「武力行使の即時停止」「全ての関係者との面会」が含まれているが軍政は「武装市民らの戦闘行為が治安を乱している」「裁判の被告人との面会を認める国などない」などとして戦闘停止やスー・チーさんらの民主政府要人との面会を拒否しているのだ。
★少数民族武装勢力との面会
ASEAN議長国カンボジアのフンセン首相もミャンマー問題でなんとか和平に向けた道筋を見出そうと2022年1月にミャンマーを訪問してミン・アウン・フライン国軍司令官と直接会談、5月にはオンラインで会談している。
しかし事態の打開にはつながらず、逆にフンセン首相は今後のASEAN関連会議に参加を拒否されているミャンマー軍政の関係者を出席させての「直接の面談が必要」として招待する方針を示し、他のASEAN国から反発を招く事態となっている。
こうした中少しでも事態打開を狙うASEAN特使のプラク・ソコン外相は7月3日までの滞在中にミャンマー国内の少数民族武装勢力のうちこれまでにミン・アウン・フライン国軍司令官と直接会談して停戦交渉に応じたり、停戦協定に署名したりした組織と面会する予定という。いずれの組織も現在は軍と戦闘状態にはない。
北部カチン州や中東部カヤー州、西部チン州の「カチン独立軍(KIA)」「カレン民族解放軍(KNLA)」「チン民族戦線」などは武装市民組織である「国民防衛隊(PDF)」と協力して軍との戦闘を続けている。
今回のASEAN特使と軍政と戦闘状態にない少数民族武装勢力との面会は「5項目の合意」に照らせば、1歩前進といえるかもしれない。
しかしASEANが求めている「全ての関係者」にはスー・チーさんをはじめとする民主派のPDF、その上部組織で民主政権幹部や関係者などによる抵抗組織である「国家統一政府(NUG)」のメンバーなど軍政と対立する関係者との面会の実現には程遠い状況といえ、和平仲介工作は行き詰まっている。
★民主派への死刑執行方針への反発も無視
軍政は6月16日に逮捕されている死刑囚の民主活動家4人への死刑執行方針を明らかにした。これには国際世論と同時にASEANも今後の交渉が完全に行き詰まることを懸念して議長国カンボジアのフンセン首相が10日にミン・アウン・フライン国軍司令官に書簡を送り中止を求めた。
しかし軍政はこれまでのところこうした各方面からの死刑執行中止には応えておらず、依然として約30年ぶりとなる司法制度上での死刑執行の可能性が残っている状況だ。
ミャンマー軍政はこのように国際社会や人権団体、ASEANによる各種の和平に向けた動きあるいは人権侵害状況の改善要求などの働きかけを無視する姿勢を続けている。
ミャンマー軍政は唯一の後ろ盾とされる中国頼みの政権運営となっており、ますます国際的な孤立が深まる状態となっており、民主派による抵抗運動は終わりの見えない状況となっている。
トップ写真:第33回ASEANフォーラムにて演説を行うアウン・サン・スー・チー氏2018年11月12日
出典:Photo by Ore Huiying/Getty Images
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