窮地の安倍元総理と「文春砲」の総指揮官 「高岡発ニッポン再興」番外編①
Japan In-depth / 2022年7月13日 11時0分
そして9月23日、病院の中で、突然の辞任を謝罪、体調が悪化したことを説明しました。安倍さんは、「自信や誇りは粉々に砕け散った」と振り返っています。
写真)辞任の記者会見に臨む安倍首相(2007年9月12日 首相官邸)
出典)Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images
世間では、「安倍晋三の政治生命は終わった」という見方が支配的でした。次の総選挙では出馬しても、当選は困難という声が多くありました。安倍さん自身、政界引退を考えていたとも伝えられています。ひ弱な政治家というイメージが広まったのです。
メディアは、次の展開を追いかけました。ポスト安倍です。福田康夫元官房長官が麻生太郎氏を破って、自民党総裁に就任。福田内閣はスタート。時代は動いていたのです。若さや選挙の顔というよりも、経験と安定がキーワードとなったのです。メディアも安倍さんについては過去の人ととらえていました。
しかし、退陣後も安倍さんに関心を寄せていたマスコミ人がいました。月刊「文藝春秋」の新谷学さんです。その後、文春砲の総指揮官として一世を風靡しましたが、当時は、月刊誌の一編集者です。
新谷さんは、かねて親交のある、安倍さんに対し、自筆で手紙を書きました。辞任の説明が十分でないとして、手記を書くよう依頼したのです。その申し出を安倍さんは受けたのです。
そして年末に3度にわたるインタビューが行われ、2008年1月10日発売の「文藝春秋」は「わが告白 総理辞任の真相」という独占手記を掲載したのです。
突然の発病がいかに深刻だったかを安倍さん本人が素直に語っています。
政治ジャーナリストの田﨑史郎さんによれば、この手記が安倍さんの転機になったそうです。この手記がなければ、「『みっともない辞め方をした政治家』として烙印を押され、政治史から消えていっただろう」(「安倍官邸の正体」田﨑史郎 講談社現代新書)。それが田﨑さんの見立てです。
新谷さんは私にとっては大学時代からの盟友です。「親しき仲にもスキャンダル」というのが信条で、さまざまな政治家から怖れられています。第二次安倍政権のスキャンダルを報じることもありますが、独占手記は、安倍さんを救った形になります。
私は文藝春秋が発売されて半年後、ある現場で安倍さんとじっくり話す機会がありました。それについては次回お伝えします。
トップ写真:前回参院選で応援演説にかけつけた安倍首相
(2019年7月7日 千葉県)
出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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