ミャンマー、民主派政治犯を処刑
Japan In-depth / 2022年7月27日 19時0分
その後家族は「今後食料や医薬品を届ける必要はない」と刑務所側から言われたという。
インセイン刑務所内の絞首台で処刑された4人の遺体は市内のティン・ビン墓地に埋葬された。
4人の家族らが弁護士と共に遺体の引き取りを刑務所側に申し入れたが「法により許されない」と拒否されたとしている。
裁判所やゾー・ミン・トゥン国軍報道官などは死刑判決後に繰り返し「法に従い死刑は執行されなければならない」と再三にわたって執行の方針を強調していた。「死刑制度を維持している国は世界に多い」とも発言していた。
今回の死刑執行は法に基づく処刑としては1976年以来となるという。人権団体などによるとミャンマーでは昨年のクーデター以後、117人が死刑判決を受けている。この中には未成年2人が含まれ41人は欠席裁判で判決が下されているという。
■ 国際的非難にさらされる軍政
4人の処刑に対しミャンマーの民主派は「暗黒の日となった」と軍政への批判を強め、ブリンケン米国務長官は25日に声明を発表し「最も厳しい言葉で非難する。軍政はクーデター以降国民に暴力を振るい2000人以上を殺害している」と批判した。
また国連のグテレス事務総長も同日報道官を通じて「死刑の執行はミャンマーの人権状況がさらに悪化していることを示している」と軍政を厳しく非難した。
写真)国連のグテレス事務総長(2021年9月)
出典)Photo by John Minchillo-Pool/Getty Images
このほか国際的な人権団体などからも軍政を非難する声が一斉に上がっているが、軍政側は意に介する様子もなく、さらなる死刑執行に踏み切るおそれもある。
司法が軍政の強い影響下にあるミャンマーでは、公正、公平な裁判は不可能で、複数の罪で訴追され、現在も被告の身であるスー・チーさんにもこれまでに4つの罪で禁固11年の実刑判決が下されており、今後も厳しい前途が待ち構えているといえるだろう。
軍政としては今回の死刑執行で反軍政の動きを牽制、鎮静化を意図したものとみられるが、むしろクーデター後に軍政に対抗して組織された民主派の地下政府ともいうべき「国家統一政府(NUG)」傘下の武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」や国境付近で反軍政の立場で活動する少数民族武装勢力との衝突、戦闘がさらに激化する懸念も高まっている。
タイ・バンコクに拠点を置くミャンマーの人権組織「政治犯支援協会(AAPP)」によると7月25日までに軍政当局に逮捕・拘留された市民は1万4870人で、殺害されたのは2120人にのぼるという数字を明らかにしている。
トップ写真:アウン・サン・スー・チーさん(2018年11月)
出典:Photo by Suhaimi Abdullah/Getty Images
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