米安保エリートの危うい北朝鮮論
Japan In-depth / 2022年7月29日 23時0分
まず、アメリカは北朝鮮が「10数発から20数発まで(no more than a dozen or two dozen)」の核兵器を保有することを認める。その上で、北を国家承認し、平和条約締結の準備に入る。在韓米軍の再編成も行う。
見返りとして北朝鮮側は、核兵器運搬システム(ミサイル)を「非常に短い射程」のものに留めると約束する。そして合意事項が守られているか、中国が責任を持って査察を行う。
「非常に短い射程」のミサイルといえば、朝鮮半島内に限定された戦術核のみとも聞こえるが、ゲイツは同時に「現状の凍結」を説いてもいる。
北が実戦配備済みの中距離ミサイル(ノドン等)を進んで廃棄するはずがない。結局、アメリカに届く長距離核ミサイルは認めないが、日本や韓国に届く核ミサイルは20発程度まで認める(両国を広範囲に廃墟とするに十分な量だろう)という露骨に宥和的かつ「アメリカ第一主義」的な取引案と言える。
ゲイツは、中国がこの提案を受け入れない場合、アメリカは厳しい対中措置に出ると明確にせねばならないという。その中身は、アジアにミサイル防衛網を敷き、太平洋艦隊を増強し、北が発射した大陸間弾道弾と思えるものはすべて撃墜する、というものである。「中国は、これらすべての措置が自らに敵対的であると理解するだろう。対処しようとすれば、何十億ドルという軍事コストが掛かることになる」。
ゲイツはこう胸を張るが、中国にとって別段ショッキングな話ではないだろう。
中国が受け入れなければ、要するに現状が続くわけだが、より重大なのは、北と中国がこのゲイツ案を受け入れた場合である。日本にとって、ゲイツ提案は論外以外の何物でもない。
しかし、インタビューをまとめたWSJ紙の有力記者は、ゲイツの案は外交アプローチとして比較的「賢明」だと評価している。
▲写真 ワイオミング高校で行われたオットー・ウォームビア青年の葬儀。家族らに見送られて出棺する様子(2017年6月22日、オハイオ州・ワイオミング) 出典:Photo by Bill Pugliano/Getty Images
このインタビューは、北で虐待されたオットー・ウォームビア青年の死(6月19日)からあまり日が経たない時期に行われた。にも拘わらず、人権に一言の言及もない点も、アメリカの主流派外交エリートの危うい感覚を示すものと言えよう。
トップ写真:マンハッタンのトランプタワーに入る、引退したマイケル・フリン中将(左)と元国防長官のロバート・ゲイツ氏(右)。2016年12月1日 ニューヨーク市・マンハッタン 出典:Photo by Drew Angerer/Getty Images
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
[社説]ウクライナ侵攻千日 戦争終結への道筋示せ
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月23日 4時0分
-
アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮兵参戦とトランプ氏の影
ロイター / 2024年11月22日 16時2分
-
ウクライナが米国製ミサイルをロシア領内に発射 プーチン大統領は〝変化球〟で反撃か
東スポWEB / 2024年11月21日 6時4分
-
ウクライナ、米供与ミサイル「ATACMS」で露国内を初攻撃か 現地メディア報道
産経ニュース / 2024年11月19日 19時22分
-
北朝鮮軍に"頼る"ロシアの姿勢が激変した事情 ついに交戦開始、北朝鮮側が得るものは?
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 10時0分
ランキング
-
1【斎藤元彦・兵庫県知事の応援団に密着取材】「文書問題なんかマスゴミが捏造しただけ」「斎藤さんは令和の二宮金次郎」… それぞれが支持する理由
NEWSポストセブン / 2024年11月26日 6時59分
-
2高崎駅前のホテルで女性客が3人組に携帯電話奪われた強盗事件 2人目の少年(17)を逮捕
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 6時57分
-
3「今さらカネが原因とは考えにくい」楽天・マー君“電撃退団”のなぜ…移籍で「神の子」復活はあるのか?
集英社オンライン / 2024年11月25日 17時20分
-
4コロナ新しい変異株「XEC株」はどんなウイルスか 「冬の対策とワクチン接種の是非」を医師が解説
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 9時0分
-
5【速報】東京・足立区のコンビニ駐車場で59歳男性が殴られ死亡 口から血を流し… 中年男が逃走中 傷害致死疑いも視野に捜査 警視庁
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 10時2分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください