李首相主宰国務院常務会議増えたわけ
Japan In-depth / 2022年8月2日 21時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・4月以降、「経済優先派」の李首相主宰の国務院常務会議の回数が増加。「反習派」による習総書記の3期目阻止の動きか。
・習主席の側近が多数失脚。習主席が人民解放軍を完全に掌握しているかも疑問。
・今秋の第20回党大会で、習総書記の3期目再選は、決して容易ではない。
今年(2022年)8月1日、『北京時事』が、次のように伝えた。
「中国軍は軍創設から95年となる8月1日に合わせた形で、習近平国家主席(中央軍事委員会主席)を支える方針を明確にしている。・・・今秋の共産党大会で、習氏が総書記として3期目入りする流れが一層鮮明となっている」(a)と決めつけた。
これでは、「習派」の優勢な宣伝部門(『人民日報』が典型)のプロパガンダを垂れ流しているに等しいだろう。我が国の中国特派員は、共産党による情報統制のため、同国内の情報が得られにくい。したがって、その傾向は仕方ない面もある(日本にいれば、世界中から中国情報を取得する事が可能)。
けれども、記事は、最近、中国で起きた出来事をことごとく無視した一方的な報道ではないか。我々はこのような「習派」によるプロパガンダを鵜呑みにできない。
さて、李克強首相は国務院のトップであり、国務院常務会議(閣議に相当)を主宰する。だが、これまで党トップの習主席が国務院トップの李首相を差し置いて、別に政治を行ってきたフシがある(党が国家よりも上位にあるため)。そこで、李首相は、「史上最弱の首相」と汚名を着せられた。
ところが、今年4月頃から、急に李首相の存在感が増している。それは、首相の主宰する国務院の常務会議招集回数の増大からも明らかだろう〔図表参照〕。ここでは、なぜ常務会議開催回数が増えたのかを考えてみよう。
図表)李克強首相が主宰した毎月の「国務院常務会議」回数
出所)『人民日報』より作成(ただし、全体会議等を含む)
実は、今年1月と2月、国務院常務会議がそれぞれ2回(前年比マイナス1回)と1回(同マイナス1回)と減った。特に、2月、北京冬季オリンピックが開催されたとはいえ、常務会議が1回しか招集されなかったのには違和感を覚える。李首相が軽んじられ、習主席中心の政治が運ばれていた証しだろう。
翌3月、李首相は全国人民代表大会閉会後の記者会見で、来年、首相を辞任する意向を明らかにした。
しかし、4月になると、突然、風向きが変わり、国務院常務会議が4度も招集された。前年比プラス2回(昨年の倍)となっている。これは明らかに、首相の存在の重要性が増した証左ではないか。
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