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ASEAN、ミャンマーに強硬姿勢

Japan In-depth / 2022年8月9日 18時0分

死刑執行にはASEANの今年の議長国であるカンボジアのフンセン首相も軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官に書簡を送って「ASEANによるこれまでの仲介に向けた外交努力に水を差す結果となるだろう」と警告していた。


それまでカンボジアは「対面での協議で事態打開を」とカンボジアで開催したASEAN国防相会議に軍政関係者の出席を認めるなどミャンマーに極めて融和的な姿勢を示し、ミャンマーにとってはASEAN内の「よき理解者」と認識されていた。


ASEAN特使でもあるカンボジアのプラク・ソコン外相のミャンマー訪問も複数回受け入れて会談に臨むなど、軍政には「御しやすい相手」だったことも事実だが、それを死刑執行が一変させたのだった。


3日の外相会議でフンセン首相は議長国首脳として冒頭演説し「全てのASEAN加盟国が(死刑執行の)失望した。今後再び死刑が執行されれば合意に対する我々の立場を見直すことも考えざるを得ない」と述べた。


フンセン首相が言及した「合意」とは2021年4月にインドネシア・ジャカルタで開催されたミン・アウン・フライン国軍司令官も出席したASEAN緊急首脳会議で合意した議長声明の「5項目の合意」を示す。


「5項目の合意」は「武力行使の即時停止」「ASEAN特使と全ての関係者との面会」などから成り、その後のASEANによるミャンマー問題への仲介・調停工作の基本となっている。


しかしミャンマー軍政は「武装市民から攻撃を受けている」「裁判の被告であるアウン・サン・スー・チーなど刑事被告人との面会をみとめる国などない」として合意履行を


拒否。死刑執行に関しても「法に従っただけである」と聞く耳を持たず、ASEANとの関係は最悪の状態となっていた。


■ASEAN特使ミャンマー訪問へ


こうした中ASEAN特使のカンボジアのソコン外相は8月7日、9月上旬にもミャンマーを訪問する予定であることを明らかにした。ソコン外相は今年3月、6月にもミャンマーを訪問しており、実現すれば2022年中に3度目の訪問となる。


ソコン外相は「ミャンマーを見捨てることはない」との立場を示しながらも「5項目合意は履行される必要がある」とも強調。


さらに再び政治犯の死刑が執行された場合はミャンマー訪問を取りやめる方針も明らかにし、軍政に対して事態打開への歩み寄りを求めている。


ASEAN外相会議ではマレーシア、シンガポール、インドネシアなどの対ミャンマー強硬国を中心に「今後仲介・調停工作で進展がなければASEANはミャンマーに対する立場を再検討する必要がある」との主張を反映してこれが一致した見解となった。


こうしたASEANの対ミャンマー強硬方針への転換に対し軍政は5日に声明を出し、「ASEANはミャンマー問題に干渉したり、反軍姿勢のテロリストに関与したりするべきではない。全ての加盟国の権利を尊重し、政府転覆や干渉、強要を控えるべきだ」と反論しているが、「5項目の合意履行」や「死刑執行中止」というASEANの要求にはなんら具体的には反論していない。


9月上旬とされるASEAN特使のソコン外相によるミャンマー訪問が実現した場合、ASEANとしてどこまで軍政に強気の姿勢を貫けるか、さらにそれに対する軍の対応に大きな注目が集まっている。


トップ写真:第20回ASEAN会議の様子(2018年11月14日) 出典:Photo by Ore Huiying/Getty Images


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