1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

陰謀説の危険 その8 日本の反ユダヤ主義の解剖

Japan In-depth / 2022年8月18日 23時0分

この書「日本人の心の中のユダヤ人」は日本でのユダヤに対する著作や発言を第一次大戦にまでさかのぼって分析し、「日本人の間にはユダヤ民族に対するきわめてゆがめられた反感や誤解がある」との基本認識を打ち出していた。


同書は「その一方、日本にはユダヤを称賛する向きも一部あるが、大方はすでに偽造が証明されている『シオン賢人の議定書』などの虚偽のユダヤ攻撃文書を基に、『ユダヤの世界制覇』とか『ユダヤの国際陰謀』という反ユダヤ言辞をあおる場合が多い」と非難していた。


同書はさらに日本でのユダヤ問題研究家とされる宇野正美氏、作家の小田実氏、NHK中東問題専門家の平山健太郎氏、アラブ研究学者の板垣雄三氏らを日本での反ユダヤ主義者の実例としてあげて、それぞれの人物について詳しい理由を述べていた。


同書はとくに冒頭で宇野正美氏の一連の「ユダヤ陰謀」書に触れ、「この種の根拠のないユダヤ陰謀説は読売、日本経済各新聞やテレビ東京などの大手マスコミでも広告掲載や特別番組の形で大きく取りあげられた」と述べていた。そのほかフォト・ジャーナリストの広河隆一氏をあげ、いずれも「ユダヤ民族の苦闘や権利を認めず、パレスチナ側の主張を全面的に支持している」として、それぞれの著作や発言を細かく紹介していた。


日本のマスコミに対しても、同書はNHKの平山氏について、湾岸戦争時のコメントやその後に出版した著書の内容から「ユダヤ民族の歴史的存在を認めず、イスラエルを狂信的な右翼国家とみなす」反ユダヤ主義者と断じていた。


アメリカで最初に出版されたこの本は日本では1999年4月に翻訳版が出た。日本語のタイトルは「ユダヤ人陰謀説」とされ、副題は「日本の中の反ユダヤと親ユダヤ」となっていた。出版社は講談社だった。


同書の日本語版が出ると、その内容が一部のメディアによって報じられ、同書で「反ユダヤの日本人」とみなされた人たちの多くが強い否定や反論を発表した。とくにNHKの著名な記者だった平山氏は具体的な根拠を数々あげて、同書の批判を否定する論文を公表した。


ただしアメリカで出版されたこの本、「日本人の心の中のユダヤ人」は「アメリカ・ユダヤ委員会」や「ユダヤ研究センター」というアメリカ国内のユダヤ系団体からの推薦を得ていた。またニューヨーク・タイムズなどのアメリカの主要メディアが前向きの評価に基づく紹介の報道をした。


日本ではかなりの同調者を得ているともいえるユダヤ陰謀説はアメリカなどではこのようにきわめて否定的な反応が圧倒的なのである。


(つづく)


トップ写真:プーチン露大統領とバイデン米大統領(イメージ) 出典:Photo by Drew Angerer/Getty Images


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください