海外資産の噂を懸命に否定する中国共産党
Japan In-depth / 2022年8月24日 23時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・SNS上で再び「中国人100人がスイス銀行に7兆8000億元、預金している」という噂がネットユーザーの間で広まっている。
・福建省当局はその「デマ」を検証し、ネットの噂は事実ではないと打ち消した。
・スイス連邦経済事務局のイネイヘン・フライシュ局長が、仮に台湾海峡情勢が変化すれば、EUの制裁に従うと明言した事と関連があるのではないか。
SNS上で再び「中国人100人がスイス銀行に7兆8000億元(現在のレート<以下同様>で約156兆円)預金している」という噂がネットユーザーの間で広まっている(a)。もし、100人の中国人が「スイス銀行」に預金しているならば、その平均預金は780億元(約1兆5600億円)となるだろう。なお「スイス銀行」とは、UBSグループ(欧州最大の金融持株会社)のことである。
福建省当局はその「デマ」を検証し、ネットの噂は事実ではないと打ち消した。当局によれば、「2017年時点で、373人の中国人富豪の所有資産合計が約7兆8000億元であり、UBSへの預金だけではない。すべての資産をUBS預金だけと言うのは、明らかに不適切である。また373名が100名に置き換えられた。『デマ』はこうして捏造された」と説明している。
これに対し、海外在住の時事評論家、顔丹は、当局がこの時期に「デマ」の拡散防止に乗り出したのは、次の事と関連があるのではないか、と分析(b)している。
最近、スイス連邦経済事務局のイネイヘン・フライシュ局長が、仮に台湾海峡情勢が変化すれば、欧州連合(EU)の制裁に従うと明言した。
一説では、スイスの銀行が、ロシア資産凍結を決定したので、一部のロシア要人が焦っているという。欧米はスイスの銀行を利用して、一般のロシア人達に対ウクライナ戦争を反対させ、プーチン政権に圧力をかけようとしているのではないか。
一方、中国共産党は台湾の「武力統一」を叫び、同島への軍事的威嚇を行っている。前述の「ロシア」を「中国」に置き換えれば、同党を震撼させるに十分だろう。
そのため、2019年から中国国内を駆け巡った、例の「中国人100人が7兆8000億元をスイス銀行に預けている」という「デマ」に対し、3年経った今もなお、当局が神経を尖らせている理由がここにあるのかもしれない。
あくまで『WikiLeaks』によるとだが、中国共産党幹部らの「スイス銀行」口座総数は5000口に達し、その3分の2は中央レベルの高官(副首相から中央委員まで)の口座だという。
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