深刻な欧州のエネルギー危機
Japan In-depth / 2022年8月25日 18時0分
ロシアは今年6、7月の2カ月間で段階的に合計80%の供給削減を実施、欧州ガス市場を震撼させている。ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムは8月19日、ノルドストリームの稼働を8月31日から3日間停止すると発表した。
◇干ばつが追い打ち
こうした中で、今年の夏、欧州ではスペイン、ポルトガル、フランスなどでセ氏40度を超える猛暑の日が続き、山火事が多発し、農場等は干上がった。ガス不足に猛暑と干ばつが加わったことで、今年の夏、欧州では市民の日常生活が様々な制約を受けた。
写真)暑さによって干上がったガードン川(2022年8月13日、フランス・アンデューゼ)
出典)Photo by Patrick Aventurier/Getty Images
スペインではバーやレストランなどの商業施設でエアコンの設定温度は27度以上と義務付けられ、フランスでは商店のウインドウの照明を消すよう求められた。オランダではシャワーの使用時間を一人当たり℉一回五分以内とするよう呼びかけている。
干ばつで欧州では大河の水位が下がり、例えばドイツなどを流れるライン川では船舶が航行できなくなったり、積み荷を減らさざるを得なくなったケースも多発。天然ガスを代替する石炭の河川輸送のキャンセルも目立った。
フランスでは原子力発電所の冷却用に使う河川の水の温度が上がり過ぎて規則の変更を余儀なくされたケースもあった。
◇明るい材料も
EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)は8月22日、スペインで講演後に記者会見し、ロシアからの供給途絶が懸念される欧州の天然ガス在庫状況について「予想を上回っている」と明らかにした。在庫水準は「70%以上で、一部では80%近くに達している」と強調。「良好な水準で冬を迎えることができる」との認識を示した。
暗くて厳しい冬が予想される欧州において一つの明るい材料と言えるかもしれない。
(了)
トップ写真:ノードストリーム(2011年11月8日、ドイツ・ルブミン)
出典:Photo by Sasha Mordovets/Getty Images
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