NPT再検討会議決裂が意味する核の脅威増大
Japan In-depth / 2022年8月29日 11時0分
ザポリージャ原発への戦闘の拡大は、ロシアが同原発及びその周辺を軍事拠点としてウクライナ軍を砲撃し、ウクライナ軍がこれに反撃するといった構図から生まれているもので、国際原子力機関(IAEA)や国連が原発事故に繋がるとして警告し、IAEAの査察団を派遣する方向でウクライナとロシア両国との調整が続いている。
しかし、ロシアは同原発を「核の人質」に取っており、あくまでもロシアの支配下においてのみアクセスを許可する方針だ。ザポリージャ原発は6基の原子炉から成るヨーロッパ最大の原発施設であり、そこでの事故は、風向きにもよるが、ヨーロッパ全体に甚大な被害をもたらす危険性を孕んでいる。従って、ロシアの非協力的姿勢は、NPTの三つ目の柱である原子力の平和利用についての大きな障害となっている。そのような状況への懸念やウクライナの施設であることを示すような表現をロシアが受け入れなかった背景には、ロシアが原発を政治軍事化していることがある。
今回の再検討会議の決裂は、核の威嚇が実際に行われ、核の使用もまだ否定できないという極めて深刻な政治軍事状況を反映し、さらに、原発事故の再発の危険も高まる中、NPT体制の崩壊の危険性を孕んでいる。北朝鮮の核能力の更なる拡大やイランの核化への進展、そして、それがさらに他の国々に波及するのを防ぐ防波堤が少しづつ崩れつつあることを予見するものである。
トップ写真:国連総会が第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議を開催している(2022.08.01)出典:Photo by Spencer Platt/Getty Images
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