中国海軍、南シナ海で外国漁船を駆逐
Japan In-depth / 2022年9月17日 11時0分
2022年3月に米海軍インド太平洋艦隊の司令官ジョン・アキリーノ大将は「ミスチーフ礁、スビ礁、ファイアリー・クロス礁での中国によるレーダー施設、ミサイル発射装置、戦闘機用のハンガーなどはすでに完成しているとみられる」とした上で「こうした中国の動きは周辺関係国のみならず、国際海域、国際空域に対する脅威である」と中国側を批判した。
その一方で9月10日にはインドネシアが自国の南シナ海南端に位置するインドネシア領ナツナ諸島北部海域の排他的経済水域(EEZ)内で航行していた中国沿岸警備隊船舶を拿捕したことを明らかにしている。
この沿岸警備隊船舶は周辺海域で操業するインドネシアなどの小型漁船の脅威となっていたことから拿捕に至ったと地元メディアは伝えている。
インドネシアは中国との間で島嶼や環礁などの領有権問題は抱えていないが、ナツナ諸島北方海域に広がるインドネシアのEEZが「九段線」と一部重複していると中国が主張している。
インドネシア政府は北ナツナ海域で中国との間になんの問題点も存在しないとして、中国側が求めている2国間での協議を拒否しているという経緯がある。
今回のような国籍不明漁船の追い払い事案は南シナ海では日常的に多発しており、周辺国の漁船は武装した中国海軍艦艇や海警局船舶の進路妨害や放水銃による放水などの妨害に太刀打ちできない状態が続いている。
中国はミスチーフ環礁以外に1988年にベトナムが統治していたのを攻撃して実効支配を続けているジョンソン南礁、南シナ海最大の環礁で中国による人口島ファイアリー・クロス礁、1980年代後半までベトナムが統治していたものの1988年の戦闘後中国が実効支配しているスビ礁、2014年に中国による埋め立てが確認されたガベン礁、中国人民解放軍海軍の南海艦隊の部隊が駐留しているクアテロン礁、人口島のヒューズ礁などでの埋め立て、軍事拠点化を進めている。
中には戦闘機だけでなく爆撃機、輸送機などが発着可能な大規模な滑走路が完備された人工島もあるという。
このように中国は南シナ海で着々と島嶼や環礁の埋め立て、軍事施設の建設、軍事拠点化を進めており、周辺国のみならず国際社会から批判が出ているものの、中国側は一方的な主張を繰り返して自国の海洋権益を必死に守ろうとしている。
こうした実情に米英豪は軍事同盟である「AUKUS」を2021年に結成して対中国政策を積極的に進めようとしているが、本格的な武力衝突になることを危惧して大胆な作戦に出れない事情もあり、それを見越したかのように中国は南シナ海での戦略的優位を着実に確立しようとしている。
トップ写真:パプアの伝統的な釣り(インドネシア 2021年9月21日) 出典:Photo by Robertus Pudyanto/Getty Images
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