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沖縄知事選結果分析② 低迷の「オール沖縄」・空転する県政

Japan In-depth / 2022年9月25日 11時0分

その背景として、2点指摘したい。


■「辺野古問題」でエネルギーを消耗する沖縄県政


1点目は、「辺野古問題」を軸に結集した「オール沖縄」と玉城知事との関係である。


この「問題」は、裁判闘争を含めて10数年続くと見られる。「辺野古阻止」を叫べば、かなりの票が取れる。知事の確実な支持基盤である、辺野古反対派を無視はできない。


とは言え、同じ主張を繰り返しても、展望が切り開けるわけでもない。すでに、運動を支えてきた県民は高齢化し、諦めムードが広がる。一方、若い世代はこの問題に関心を示さない。


観光産業の立て直し、新しい産業の創出、離島問題、子どもの貧困、医療体制の整備など、県政の課題は多い。自前の財源が乏しい県は、国からの財政支援に頼らざるを得ないが、「辺野古問題」で県と国の関係が悪化し、沖縄関連予算は大幅に削られた。県庁の職員はもちろん、県民の間にも不安が募る。


■ パフォーマンス好きの玉城知事


玉城デニー知事の好感度は抜群である。一方で、同氏はパフォーマンスに傾きがちだ。


1期目に実施し、2期目も再度計画されている「全国トーク・キャラバン」は、その典型例だ。筆者も参加したことがあるが、集まった人々のほとんどは、「デニー」ファンか、基地反対運動の活動家たちだ。この類のイベントがどんなに盛り上がろうと、本土の幅広い層に沖縄の問題を訴える、という本来の趣旨は達成できない。


また、知事は、当選直後のインタビューなどで、「国連に辺野古問題を訴える」と述べた。この「国連」は、「国連人権理事会」を指すと見られる。


だが、この国連機関の理事国には、王政に批判的なジャーナリストを殺害したサウジアラビア、香港の一国二制度を破壊し、新疆自治区ではで百万人とも言われるウィグル人を強制収容所に押し込め、躊躇なく人権を抑圧する中国が含まれる。知事は、その実態を踏まえているかどうか。あるいは、国連で演説したことをアピールしたいだけなのか。


■ 人脈・情報の不足と小沢一郎氏の責任


玉城デニー氏が抱えるもう一つの問題は、人脈と情報が限られることだ。


議員とは異なり、知事は県行政のトップだ。当選するまでは政治家だが、知事に就任したと同時に行政マンに変身しなければならない。支持層だけでなく、県民全体を代表し、県のさまざまな課題を俯瞰する視野と、人材を見分ける眼力を持たねばならない。


行政のトップとしての力を発揮するには、豊富な人脈が必要だ。しかし、同氏は、衆議院議員を務めた9年間、東京で官僚やジャーナリスト、学者、外交官などとのネットワークを築かなかった。そのため、情報や政策アイディアの不足に悩まされている。


デニー氏の人脈・情報不足は、彼が崇拝する「恩師」、小沢一郎氏の責任でもある。


小沢氏は、若い時代に、記者や学者、外交官などと頻繁に会い、人脈の構築と情報収集に余念がなかった。だが彼は、側近たちには同じ動きを許さない。彼らが成長し、彼の政策や判断に異論を唱えることを嫌うからだ。多くの政治家、有識者、記者たちが彼から離れたのは、小沢氏が自分とは違う意見を述べる人間を陰で攻撃し続けたためだ。


玉城知事は、独裁者小沢氏の犠牲者と言えるかもしれない。


しかし、玉城デニー氏は、今や140万人の県民を背負う知事である。今後、独自の人脈を作り、自前の情報収集の体制を作り上げる必要があるだろう。だが、今のところ、その方向には動いてはいないようだ。さてさて、これからもデニー劇場で、玉城氏の独演会が続くのだろうか。


(つづく)


トップ写真:当確直後の玉城デニー氏(2022年9月11日) 出典:筆者撮影


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