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日本が育てた覇権国家中国 日中国交50年の反省 最終回

Japan In-depth / 2022年10月11日 11時0分

この言葉の背景には当時も現在も中国軍が台湾に近い福建省内に部隊とミサイル群を集中的に配備してきた経緯があった。明らかにいざという際の台湾攻撃のための大規模な配備である。そうした軍事態勢では兵器や軍隊を敏速に動かす鉄道は不可欠である。軍事態勢の一部だといえるだろう。日本政府は1993年にその福建省の鉄道建設に67億円の援助を出していたのだった。


日本政府は本来、この種の軍事寄与につながるODAは出してはならなかったのである。日本政府自身がODA供与の指針とした「ODA大綱」は日本のODAの「軍事用途への回避」を明記していたからだ。とくに相手国の「軍事支出、大量破壊兵器、ミサイルの動向に注意」することを義務づけていた。だが日本政府、より具体的には外務省主導による対中ODAはこのあたりの規定にすべて違反していたのである。


この「大綱」の規定に従えば、日本政府は軍事費の支出が異様に多い国、軍国主義志向の国、大量破壊兵器やミサイルを大量に保有し配備する国には、本来、ODAを提供してはならないはずだった。だが史上稀なほど大規模で長期的な軍事力増強の道を疾走する中国に日本政府は日本国民の血税からのODAを与え続けたのである。


そしてその結果、強大となった中国の軍事力によって日本が脅威を受け、日本固有の領土の尖閣諸島などを奪われそうになる。まさに自分がつくり出したモンスターによって自分が襲われるという倒錯の現象を生んだといえるのだ。


ここで私はやや陳腐かもしれないが、どうしても「資本家は自分の首を絞めるロープまで売る」という共産主義の始祖レーニンの言葉を想起してしまう。目先の利益だけを追求する資本家ビジネスマンは、敵となる相手にやがては自分たちを傷つけ、殺すことにもなる武器までも売りつけるという意味の言葉だった。


日本が中国の強大化にせっせと励んできたのは、結局、日本の首を絞めるロープを与えたということに等しいのではないか。ただしレーニンの語る資本家は潜在敵にロープを「売る」のだからまだよい。日本の場合は、中国にロープを「与えてきた」のである。


その中国がいまや国際規範に背を向けて覇権を広げ、日本の領土をも脅かす異形の強大国家となったのだ。日本の対中ODAはそんな覇権志向強国の出現に寄与したのである。


これはまさに日本の外交政策の大失態である。日中国交樹立50周年に当たる2022年を機に、反省、自省が欠かせないと思う次第である。


(全5回終わり。その1、その2、その3、その4)


トップ写真:天安門広場での中国軍の軍事パレード。弾道ミサイルも展示された。(2015年9月3日) 出典:Photo by Andy Wong - Pool /Getty Images


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