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旧統一教会「解散命令」論議に潜む危うさ

Japan In-depth / 2022年10月18日 18時0分

 


■目指す終着点は何なのか 解散で監督官庁がなくなってもよいのか


安倍元首相殺害の後に勃発した、旧統一教会をめぐる議論は、一体何を目指しているのか、聞いていて時々よくわからなくなることがある。山上徹也容疑者が望んだように教団を潰すことなのか、被害者を救済することなのか、教団の違法行為を是正させることなのか、それも旧統一教会だけを対象にするのか、あらゆる中間団体のいわゆるカルト的行為を点検するのか。


いま、宗教法人法の解散命令をめぐって、前例が2つしかないこともあり、旧統一教会に適用可能かどうかをめぐって法律家どうし白熱した議論がかわされている。


一方で、法人格を剥奪しても団体としては存続し得るから、信仰の自由を侵害することにはならないという。他方で、宗教法人には税制優遇があり、これが増長の要因になっているから、これを剥奪する意義があるという。だが、法人格を剥奪したとして、それによって何が得られるのだろうか。その後の見通しはついているのだろうか。


私が真っ先に思うのは、解散となれば、監督する所轄庁がなくなることである。オウム真理教の場合、解散後も活動を続けている残党団体が「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(団体規制法)により、公安調査庁の監視下に置かれている。


だが、無差別大量殺人を行ったわけではない旧統一教会が解散しても、この法律が適用されることはない。解散後も活動を続ければ、社会からより見えにくい存在になり、行政も関われなくなる。それでもよいのだろうか。


 


■公益法人制度を参考にした宗教法人法の見直しを


旧統一教会が多くの問題を引き起こしていることは事実で、看過すべきではない。このような問題のある宗教法人を税制上優遇するべきでないというなら、まず、宗教法人格と税制優遇が不可分となっている現行法制度の見直しを議論すべきではないだろうか。


公益法人制度やNPO法制度では、法人格取得だけでただちに税制優遇はなく、所轄庁が一定の基準をクリアしていると認定した法人にのみ税制優遇措置が与えられる仕組みとなっている(内閣府参照)。ところが、宗教法人法では、そのようになっていない。公益法人制度のように、宗教法人も税制優遇を認めるタイプとそうでないタイプに分けるよう制度改革するということは考えられないか。


旧統一教会が宗教法人以外の、さまざまな関連団体・企業を有していることはよく知られている。メンバーが重なり合っている関連団体・企業の情報開示も義務付け、監督システムを強化する。そうして一定の基準をクリアしていると認定された宗教法人にのみ税制優遇を与える。制度移行期を設け、その間に基準を満たさなければ、税制優遇のない一般宗教法人に格落ちするが、監督の対象とする。基準を満たすところまで改善すれば、税制優遇のある認定宗教法人に格上げし、5年ごとの再認定を必要とする。逆に、違法行為が著しく、是正の見込みがなければ、最終的に法人格を剥奪する。たとえば、そんな制度改革の方向性も考えられるのではないか。


こうした制度改革の議論は時間もかかる。だが、解散命令も司法の手続きが必要で、やはり時間がかかる。明覚寺の解散命令も、請求から最高裁で確定するまで約3年かかっている。もしかしたら法制度改革の方が早く、しかも旧統一教会に限らない宗教法人全般の問題解決に寄与できるかもしれない。


「旧統一教会」を袋叩きにして溜飲を下げることが目的でないのだとしたら、解散命令にこだわるのではなく、冷静に宗教法人制度のあり方について議論を開始すべきではないだろうか。


トップ写真:与党党首会談及び総合経済対策についての会見を行う岸田首相 2022年10月14日 首相官邸


出典:首相官邸


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