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医師不足解消の決め手「オンライン診療」

Japan In-depth / 2022年10月26日 23時0分

どうすればいいのか。私はオンライン診療の活用を提案したい。コロナパンデミックの3年間で、オンライン診療は発展し、急拡大した。オンライン診療の普及は、世界の医療のあり方を変えつつある。その一例が中絶禁止を巡る米国社会の対応だ。6月24日、米連邦最高裁判所は、妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆した。


ところが、米国で「中絶難民」は問題とはなっていない。その理由は二つだ。一つは中絶の手段が手術から薬物に変わっていることだ。米国では2000年にミフェプリストンとミソプロストールという内服薬を用いた中絶が認可された。2019年現在、54%の中絶は内服薬によるものだ。


もう一つは、コロナ禍でのオンライン診療の普及だ。医師との対面診察の要件が緩和され、オンラインでの診察後に中絶薬を郵送することが認められた。この結果、中絶が禁止されている州に住んでいる人も、遠隔医療でマサチューセッツ州など中絶を認める州で開業している医師の診察を受け、薬を処方してもらうことができるようになった。


米国在住の大西睦子医師は「私が住んでいるマサチューセッツ州では、7月29日、州外に住む患者に中絶サービスを提供する医療従事者を強力に保護する、抜本的な新しい生殖に関する権利法を可決しました」という。


米国社会が、このような対応が可能だったのは、コロナによりオンライン診療が発展したからだ。この技術を用いることで、イデオロギー対立を深めることなく、患者は勿論、医師の自己決定権を保障している。私は、米国の医療は、コロナを契機に新たなステージに入ったと感じている。


コロナ禍で一変したのは中絶だけではない。製薬企業の治験のあり方も一変した。昨年11月、米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、糖尿病治療薬カナグリフロジンの第3相臨床試験を、被験者が医療機関に通院することなく、全てバーチャルでやり遂げたのは、その象徴だ。


オンライン診療の普及は地域医療のあり方も変える。手術は兎も角、プライマリケアなら、僻地や離島の住民も名医の診察を受けることが可能になる。米国では、ユナイテッドヘルスケア社などが、遠隔診療に限定したプライマリケアを提供する保険の販売を開始した。同社の調査によると、利用者の4人に1人は主治医と直接会うより、オンライン診療の方が良いと回答している。


米アマゾンが米ワンメディカル社を約39億ドルで買収したことも、このような流れに沿ったものだ。ワンメディカル社は、利用者が年間199ドル支払えば、プライマリケアをバーチャルケアと対面ケアを提供するサブスクリプションモデルで提供する会社だ。3月時点で約77万人と契約し、188の診療所と提携している。


内科医の仕事のメインはプライマリケアだ。米国の経験から明らかなように、多くをオンライン診療で代替できる。世界から遅れること2年、日本も漸く、オンライン診療の規制緩和の議論が盛り上がってきた。内科医不足が深刻な福島県が、オンライン診療を活用しない手はない。改革は常に辺境から起こる。福島から日本の医療を変える好機である。


トップ写真:国立遠隔医療センターは、中国河南省鄭州で5G情報技術を使用して、診療を行う(2020.10.26 )


出典:Photo by TPG/Getty Images


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