ブラジル大統領選 気になる破れた現職大統領の動き
Japan In-depth / 2022年11月3日 23時4分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2022#43」
2022年10月31日-11月6日
【まとめ】
・ブラジル大統領選挙。気になったのは、敗れた現職大統領が敗北を認めるか否かだった。
・ボルソナロ大統領の反応次第で、2024年の米大統領選挙に関する見方も変わるかなと思ったから。
・ペローシ米下院議長の夫君襲撃事件は、まともなアメリカ人にとってかなりの衝撃だった。
今週、恥ずかしながら、実はこのコラム執筆を危うく忘れるところだった。友人から「今週はどうなっているのか」とお叱りを受け、木曜日午後に初めて気付いた。今依頼を受けている著書を2冊、先週ほぼ同時に書き始めたのだが、「今週は随分はかどるな」と思っていたら、やはり「外交安保カレンダー」を書くのを忘れていたようだ。
「うーん、そろそろ認知症か」とやや自虐的にもなったが、とにかく書くべきものは書かないと・・・・という訳で、遅れてしまったことをまずはお詫び申し上げたい。
今週はブラジル大統領選挙があった。予想されていた現職の敗北にはあまり驚かなかったが、最も気になったのは、敗れた現職大統領が敗北を認めるか否かだった。
なぜブラジルなのか。それは、今回の選挙結果に対するボルソナロ大統領の反応次第で、2024年の米大統領選挙に関する見方も変わるかなと思ったからだ。ボルソナロは「ブラジルのトランプ」、煮ても焼いても喰えない保守系ポピュリスト政治家だが、敗れた現職大統領がどう反応するかがちょっと気になったのだ。
同大統領が、①敗北を認める場合、②敗北を認めない場合でも、あくまで言論による批判に止める場合、そして最後は、③敗北を認めないだけでなく、自由で公正な選挙プロセスに異を唱え、結果を覆すべく物理的抵抗や反対運動を続ける場合の3つを考えてみた。
もう一つ筆者が懸念したのは、米国における政治テロの横行だ。ペローシ米下院議長の夫君襲撃事件は、多くのまともなアメリカ人にとってかなりの衝撃だったと思う。残念ながら、憲法上国民に銃で武装する自由を認める米国は「暴力の国」であり、強盗、襲撃、銃乱射など日常茶飯事なのだから、驚いてはいけないのかもしれない。
それでも、最近までは幸い、政治指導者に対するこの種の悪質な暴力事件は起きていなかった。でももし犯人が銃で武装していたら、下院議長の夫君は殺されていたかもしれない。しかも、これだけの事件が起きても、米国では暴力防止や銃規制の議論が全く起きない。こんなことで米国はブラジルの民主主義を笑えるのだろうか。
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