豪北部に米戦略爆撃機展開へ 対中措置
Japan In-depth / 2022年11月4日 11時11分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・米空軍の戦略爆撃機B52をオーストラリア北部の豪空軍基地に展開する計画がある。
・中国によるミサイルの脅威から核爆弾も搭載可能なB52を米本土以外に分散配置し、反撃能力の維持を確立する狙い。
・中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で「地域の軍拡競争を引き起こす可能性がある」と指摘。
米空軍の戦略爆撃機B52(ストラスフォートレス)をオーストラリア北部の豪空軍基地に展開する計画があることがメディアの報道で明らかになった。
背景にはインド・太平洋地域で軍拡路線を続ける中国によるミサイル脅威からB52を分散配置させることで安全確保と反撃能力の保持があるとみられている。
これは米系ラジオ放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」系列のオンラインメディア「ブナ―ルニュース」が10月31日に伝えたもので、米国防省が2022年8月に豪北部ダーウィンの南東部にあるティンダル豪空軍基地内にB52を格納する「ハンガー」6機分を建設するための情報を請負業者に依頼していることが米政府の契約サイトで明らかになったとしている。
同時に豪ABCテレビ局も10月31日に「豪空軍基地の拡張の詳細な計画を確認した」と報道し、「ブナ―ルニュース」の報道を裏付けたとしている。
米軍と豪軍はダーウィン近郊での米海兵隊の展開訓練や空軍の合同演習などを重ねて「同盟関係」を強化しており、その一環としてB52の配備計画が進んでいるものとみられている。
B52は運用開始が1955年と古い爆撃機だが、米軍は改良や改修を何度も繰り返して実戦配備を続けており、航続距離が16,316キロもあることから万が一の場合は中国本土への空爆任務を行いうる戦略爆撃機として米空軍は現在も約70機を保有し、その存在は米の核戦略の一翼を担う空軍力として依然重要視されている。
■米空軍と豪との密接な関係
米空軍はこれまでも各種航空機を豪に派遣して両国空軍の連携強化を図っている。
2015年7月には米ルイジアナ州バークスデール空軍基地を離陸したB52爆撃機2機が44時間をかけて豪までノンストップ往復飛行を行った。
豪では射爆場に通常爆弾の模擬弾を投下する爆撃訓練も行い、ティンダル基地の上空を低空飛行したが着陸することなく米本土に向かう長距離往復飛行というミッションを実現した。
また2017年2月には米戦闘機F22が12機編隊でティンダル基地に飛来し、豪空軍のFA18ABと2国間統合訓練を実施したほか、2016年3月には米空軍のB2爆撃機が豪で共同訓練に参加するなど米軍機のティンダル基地への飛来は幾度となくおこなわれていることも今回のB52配備計画の背景の一つと考えられている。
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