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オンライン診療、普及させよ【2023年を占う!】医療

Japan In-depth / 2022年12月10日 11時0分

オンライン診療の発展は中絶医療にも影響している。米連邦最高裁判所は、妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆したが、中絶難民は大きな問題とはなっていない。


それは、米国では内服薬を用いた中絶が主流で、オンラインで処方できるからだ。米国在住の大西睦子医師は「私が住んでいるマサチューセッツ州では、7月29日、州外に住む患者に中絶サービスを提供する医療従事者を強力に保護する法律を可決しました」という。


この結果、中絶が禁止されている州に住んでいる人も、オンライン医療で中絶を認める州で開業している医師の診察を受け、薬を処方してもらえるようになった。


日本の状況は対照的だ。オンライン診療の普及は遅い。開業医の地域独占が崩れる日本医師会は猛反対しているが、本当の抵抗勢力は彼らではない。私は、厚労省医系技官を筆頭とした医師偏在対策関係者と考えている。


医師不足を認めなかった厚労省は、医師偏在こそ医師不足の原因と主張してきた。地方を嫌い、都心に住みたがる若手医師を問題視し、後期研修制度、医学部入学地域枠制度など、様々な制度を作り、若手医師を地方に縛りつけてきた。そして、そのために設置された組織に多くの関係者がポストを得た。医師の強制配置が利権と化しているのだ。彼らにとり、オンライン診療の普及は悪夢だ。


彼らは抵抗に余念がない。年末になって、かかりつけ医の登録制を打ち出した。オンライン診療が発展した現在、昔ながらのかかりつけ医モデルに固執する合理的理由はない。


この件は、元は財務省が医療費カットのために仕掛けたものだろうが、厚労省と日本医師会が便乗した。この登録制を進めることで、医師会の診療所は、患者を縛り付けることが可能となり、オンライン診療や顧客サービスの向上を図っている新興の医療機関との競争から守られる。このやり方をやっている限り、医師偏在は永久に解決しないため、厚労省にとってもありがたい。


我が国では、既得権者が拒否権を持っている。様々な理由をつけて抵抗する。ツケを払うのは国民だ。オンライン診療の発展で、僻地に住んでいても名医の診察を受けることができるようになったのに、そのような機会は閉ざされている。アマゾンが急成長して、僻地に住んでいても、あらゆる本を購入できるようになったのに、医療ではそうはいかない。書店の倒産はやむを得ないが、日本医師会に加盟する医師を「倒産」させるわけにはいかないのだろう。


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