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集団安保の強化【2023年を占う!】国際情勢④

Japan In-depth / 2022年12月13日 13時19分

実はウクライナもNATO加盟を希望していた。ロシアがウクライナに軍事侵攻した理由の一つはウクライナのNATO加盟を阻むことでもあった。


アジア太平洋でも2021年にはアメリカ、イギリス、オーストラリア3国による新たな軍事同盟といえるAUKUSが生まれた。中国の軍事的な膨張や攻撃を集団態勢で抑止することが主眼だった。アメリカからオーストラリアへの原子力潜水艦の供与が主体となる新しい集団安保の取り決めだった。


アメリカ、インド、オーストラリア、日本の4ヵ国によるQUADも集団同盟とまではいかないが、明らかに中国の脅威を意識しての安全保障の多国間協力である。


東アジアでは年来の日米同盟や米韓同盟もその重要性が改めて強調されるようになった。その強化のための多様な措置が具体的にとられた。その直接の原因は明らかに中国の大規模な軍事拡張や、北朝鮮の冒険主義的なミサイルや核兵器の動きへの警戒だった。国家の安全保障は単独でよりも価値観や利害を同じくする他の諸国と力を合わせての方法が効果的だとする思考である。


 中国と北朝鮮の軍事脅威を実際に感じる日本にとっては、唯一の同盟国のアメリカとの集団防衛態勢を強化しようと努めることは自然であり、不可欠だともいえる。ただしその結果、日米同盟の固有の片務性に光を当てることとなる。日本にとっての集団安全保障態勢である日米同盟を強化しようと図れば、日米同盟がNATOとも米韓同盟とも基本の構造が異なることが障害となる。


現在の日米同盟はアメリカのドナルド・トランプ前大統領が簡明な表現で指摘したように、「日本が攻撃されればアメリカは日本を全力で守るが、アメリカが攻撃されても日本側はなにもする必要はない」という片務性が特徴である。


日米同盟では日本の領土や領海に武力攻撃がかけられた場合はアメリカは日本と共同で反撃し、日本を防衛する責務を掲げているが、アメリカが日本の領土、領海の外で攻撃された場合は日本にはなんの防衛責務はない。


日本の安全のために活動しているアメリカ海軍の艦艇が日本の至近の海域で攻撃されても、日本の領海でなければ、日本の自衛隊は座視してよい、ことになっている。この点、米韓同盟ではアメリカ側が太平洋地域のどこでも武力攻撃を受けた場合、韓国は自国への攻撃に等しいとみなして米軍の戦闘を支援することになっている。米韓同盟は双務的、日米同盟は片務的なのである。


日本のこの特殊事情は日本国憲法の制約に由来する。日本は国外、あるいは公海で戦闘をしてはいけない、つまり集団的自衛権の行使は禁止されているのだ。日本側の平和安全法制で米軍を支援する集団的自衛権の一部行使が認められたとはいえ、なお非常に限定的のままなのである。


だから新年の世界的な潮流ともいえる集団安全保障の重視傾向では、わが日本はまた一つ、重大な課題を自らに提起することともなるだろう。


これまた日本にとっての国難と呼んでも誇張ではない。


(⑤につづく。①、②、③)


トップ写真:海上自衛隊駆逐艦 JS 日向 (DDH-181) は海上自衛隊創設70周年記念 国際観艦式に参加する(2022年11月6日 相模湾)出典:Photo by Issei Kato - Pool/Getty Images


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