中国は信頼できない 比有力紙コラム
Japan In-depth / 2023年2月3日 11時0分
この論調は長年フィリピン政府や国民の間にわだかまっていた心情を素直に吐露したもので、南シナ海の領土問題でフィリピンが置かれている微妙な立場を如実に反映したものといえるだろう。
★経済問題と領土問題の表裏
フィリピン政府は中国による多額の経済支援やインフラ整備に経済的に大きく依存していることは間違いない。しかし経済的関係と南シナ海の領土を巡る問題は全く「別次元の問題」としてこれまで対応して来た。
ただドゥテルテ前大統領も「主張することは主張するが中国との対立は極力避ける」という戦術で波風を最低限に抑え込んできた経緯がある。
マルコス大統領も大統領就任前には「領土問題では1ミリも譲らない」と強硬姿勢を打ち出して当選を果たした。
しかし今回の習近平国家主席との首脳会談でも「フィリピン漁民の操業を妨げない」ことで合意を取りつけたとはいえ、肝心のEEZ内の島嶼や環礁の領有権問題では強い態度に出ることできず、これまで通りの融和的ともとれる路線を継続したに過ぎなかったとの見方が有力だ。
★南シナ海問題の国際的判断を無視
南シナ海を巡っては中国が一方的にその大半を占める「九段線」なる海域を設定して自国の海洋権益を主張。フィリピンやマレーシア、ベトナム、ブルネイ、台湾との間で領有権問題が生じている。
中国は複数の島嶼や埋め立てた環礁に地上構造物を建設して「実効支配」を一方的に進め、一部には滑走路や格納庫、兵舎、港湾施設、ミサイル基地などを整備して軍事拠点化している。
フィリピン政府は2014年に当時のベニグノ・アキノ大統領が「九段線」の無効を求めてオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)に訴えを起こした。
PCAは審理の結果2016年に「九段線とその囲まれた海域に対する中国の主張してきた歴史的権利は国際上の法的根拠がなく国際法に違反する」との判断を下した。
しかし中国はPCAの判断を一貫して無視し続け、一方的かつ勝手な主張と行動を繰り返している。
★各界への中国の影響力に注意喚起
ガッチャ氏はコラムの中でさらに「漁民や民警は実際には中国軍の民兵であることなど中国の軍事戦術にもマルコス大統領は注意しなければならない」としたうえで「政府や産業界、芸術界、メディアにおける中国の影響力にも注意しなけらばならない」と指摘している。
「潜入と情報操作に長じている中国は軍内部にも影響力を及ぼし反中国的あるいは親米的軍人を排除して中国に友好的な軍人を抱きこもうとしている可能性がある」と中国の影響力を徹底的に排除することが必要だと主張、各界に警戒を喚起している。
「中国軍艦艇による南西部スールー海やカリマンタン島との間のシブツ海峡といったフィリピン内海への中国軍艦艇の侵入や通過、さらにフィリピン国内にいるとされる約300人の諜報員などの問題に対してフィリピンとしては「中国の恣意的かつ一方的な姿勢に対しては法の秩序による対処するしかない」としてあくまで法による正義と公正を求めていく姿勢がフィリピン政府に求められているとの立場を強調している。
2月8日から日本を訪問する予定のマルコス大統領にとっては耳に痛いコラムだが、今後どこまで南シナ海問題で中国に対して「法の秩序」に基づく交渉ができるかが問われている。
トップ写真:中国大使館の外で、係争中の南シナ海での中国の海洋活動に対する抗議に参加するフィリピン人。2022年7月12日 マニラ、フィリピン
出典:Photo by Ezra Acayan/Getty Images
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