イギリス経済不調の一因 ブレグジット
Japan In-depth / 2023年2月6日 23時0分
ミーノン教授は、英国が直面する問題として、インフレ、医療危機、教員や鉄道労働者らによるストの多発などを挙げ、「政府レベルではこの7年間ほとんど何もなされなかった」と強調した。
新型コロナワクチンについては、たとえEUにとどまっていても接種キャンペーンの開始は早かったはずだとの説もある。
米紙ニューヨーク・タイムズは、「英国の国内世論はブレグジット反対に傾いた」と指摘。世論調査会社ユ―ガブ(YouGov)によると、調査対象の56%がEU離脱は間違いだったと回答。32%が良い考えだと答えた。
ブレグジットの影響に対する幻滅はほぼ英国内全体に広がっているという。しかしそれにもかかわらず、EU再加盟に向けた交渉開始への機運は盛り上がらないようだ。再加盟交渉で厳しい条件を突き付けられると予想されるからだとみられる。
◇33万人の不足
ブレグジットで最も痛みが強いのが労働市場だ。3年前のブレグジットの後1年間は移行措置としてEUの単一市場に留まることができたが、その後、ポーランドをはじめとする東欧諸国などから英国に働きに来ることは自動的には許可されなくなり、ビザの取得が義務付けられるようになった。
こうした中で、複数の調査機関によると、英国は小売りや運輸、接客サービスなどの分野での低スキルの仕事を中心に約33万人の労働力不足に直面しているという。
ブレグジットをめぐる2016年の国民投票以降、欧州大陸からの多くの移民が英国を去り、また、空いたポジションを埋めるための人材確保はブレグジットにより難しくなったようだ。
英国はブレグジットにより移民管理などでEUから主権を取り戻したが、その代償として労働力不足などに直面しているといえよう。
そして、東欧諸国など英国への移民の主要な送り出し国では労働条件などが徐々に改善してきており、その一方でブレグジットで英国での労働が厳しく規制されるようになったことを勘案すれば、英国は欧州大陸から見ればもはや魅力的な労働市場ではないとの見方もある。
労働力不足を解消するためにはブレグジットに伴う厳しい移民管理を緩和すべきだとの主張もあるが、それだけでは不十分なのは明らかだ。
こうした中で、英国が中長期的に成長軌道に戻るにはEUとの経済関係の全般的な改善は避けて通れないだろう。
(了)
トップ写真:ブレグジット3周年を迎えた英国会議事堂前でプラカードを掲げる反ブレグジット運動家 出典:Photo by Carl Court/Getty Images
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