中国艦艇、比沿岸警備艇にレーザー照射
Japan In-depth / 2023年2月17日 7時0分
大統領府によると、黄大使に対してマルコス大統領は「最近の比沿岸警備隊や比漁船に対する自国の海洋権益内で発生している中国による頻繁で集中的な行為に対して重大な関心がある」と伝えた。
これに対し在比中国大使館は、声明の中で「黄大使とマルコス大統領は互いに対話とコミュニケーションを通じて両国の海洋問題を的確に扱うとの観点から意見を交換した」と述べるに留まった。
中国はこれまでにも米軍機やオーストラリア軍用機に海上艦艇からレーザー照射を行ったことが報告されている。
いずれも艦艇に対して異常な低空飛行を行ったとか、危険を招く航路で飛行したなどとして謝罪は一切なく自らの行動を「正当化」している。
■比側は“武力行使”に匹敵と非難
フィリピン各紙は大学や海事の専門家の見解を一斉に伝えているが、その報道の全てが「レーザー照射は武力行使に近い挑戦的な行為である」として中国側の行為を非難し、その上でフィリピン政府に対して「こうした攻撃的な“武力行使”に関してはより断固とした対応が沿岸警備隊や海軍には求められる」と激しい論調となっている。
フィリピンと米国は比米相互防衛条約や防衛協力強化協定(EDCA)を締結しており、フィリピンが侵略や軍事攻撃を受けた場合には米が防衛協力をするという戦略的、軍事的パートナーとなっている。
こうしたことから「今回の中国によるレーザー照射は相互防衛条約を発動する要件になりうる事案である」という事態の深刻さを訴え、強硬な意見もでていることも報道されている。
中国は海警局船舶を動員し、南シナ海の大半を占める「九段線」という一方的に設定した海域を中国の海洋権益が及ぶ範囲としており、周辺国との間で領有権問題や漁業操業問題、海底資源開発問題などを惹起させている。
領有権問題は中国との間でマレーシア、ベトナム、ブルネイ、フィリピンが抱えており、海底の天然ガス油田、石油の開発、探索活動ではマレーシアやインドネシアが中国からの監視、妨害などを受けている。
米やカナダ上空で正体不明の気球が相次いで発見され空軍機によって撃墜される事案が続いているが、最初に米本土上空で発見された気球に関しては「気象観測用気球が誤って米上空に流れた」として少なくとも中国は自国の気球であることを認めている。
しかしそれに対して中国でも正体不明の気球が複数発見されているなどと対抗する姿勢を示すなど、中国はあらゆる外交問題で自国の非を認めることなく相手を攻撃して自己を正当化するのが通常の外交と化している。
今回の比沿岸警備隊艦艇へのレーザー照射も中国は同様のある意味では分かりやすい手法での対応をとっているものの、フィリピンの憤りはこれまで以上に激しさを増している。
明らかに中国に配慮や忖度して「口では厳しい姿勢を示しながらも実質的に何もしなかった」とされるドゥテルテ前大統領とは異なる姿勢のマルコス大統領だけに、今後南シナ海での緊張は一気に高まりそうな気配である。国際社会も中国の強引で一方的、勝手な手法に対して一層の警戒を強めている。
トップ写真:南シナ海での中国の活動に抗議するフィリピンの人々(2022年7月)出典:Photo by Ezra Acayan/Getty Images
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