南シナ海の状況 比が国際社会に訴え
Japan In-depth / 2023年2月22日 11時0分
■国際社会の協力と理解求めて
マルコス大統領の南シナ海問題への対処は対中融和策を取っていたドゥテルテ前大統領とは異なり、2022年6月の大統領就任直後から中国に対して経済問題では協力する姿勢を取りながらも安全保障問題、領有権問題では厳しい姿勢を貫いている。
2023年1月に訪中したマルコス大統領は習近平国家主席との首脳会談で経済問題に加えて南シナ海での中国艦船による比漁船などへの不法行為が増加し緊張が高まっていることに関しても協議したとされ、「友好的な協議を通じて対処していく」と外交交渉で問題解決を図るとの方針で一致したとされている。
その合意があるにも関わらず今回のレーザー照射問題が起きたことは、マルコス大統領の中国への信頼を裏切るに等しい行為であり、外交ルート(比在中国大使館)を通じた抗議に加えて黄渓連中・中国大使をマラカニアンの大統領官邸に呼び出してマルコス大統領自身が遺憾の意を伝えるという異例の行動にも表れているといえる。
こうしたこともありミュンヘン安保会議(MSC)の席で参加した約200人の各国関係者に南シナ海で今起きていることを伝えて国際社会と理解を共有することも中国への「圧力」になるとの思惑がフィリピン側にあったのは間違いない。
ウクライナ情勢と各国による経済支援、軍事支援、ロシア制裁が主要なテーマであった。わずかに東アジア問題として北朝鮮の核開発などが取り上げられたもののフィリピンが提起した南シナ海問題はほとんど注目されなかったという。
■相変わらず続く中国の嫌がらせ
2月20日の比紙「インクワイアリ」のネット版は南シナ海では2月6日に発生したレーザー照射問題に伴う14日の中国への厳重な抗議があったにも関わらず中国海警局の船舶などによる比漁船に対する嫌がらせ行動などが相次いでいることを報じた。
フィリピン軍艦艇が座礁して実効支配を続けている南シナ海のアユンギン礁周辺海域やスカボロー礁の礁内で漁業を続けるフィリピン漁船に対して中国民兵とみられる人員が乗り組んだゴムボートなどが接近して「漁業をするな」「礁の外に立ち去れ」などと言われて進路妨害や操業への嫌がらせが起きているという。
こうした中国の行動は1月の比中首脳会談での合意を踏みにじる行為であり、2016年にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)が出した「中国が主張する南シナ海の九段線とその囲まれた海域での歴史的権利は国際法上の根拠がなく国際法に違反する」という判断を無視し続けている中国の姿勢と同じである。
こうした中国による「自分たちに都合の悪いことは無視する一方で都合のいい主張を力づくででも押し通そうとする身勝手さ」が南シナ海問題でも幅を効かせているのが現状で、それを何とか打破しようとしているのが今のマルコス政権といえるだろう。
トップ写真:ミュンヘン安全保障会議でオンライン演説するウクライナのゼレンスキー大統領(2023年2月17日 ドイツ・ミュンヘン)出典:Photo by Johannes Simon/Getty Images
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