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武漢・大連で起きた「白髪運動」

Japan In-depth / 2023年2月24日 12時10分

一方、新制度下では、薬の購入が不便となった。多くの高齢者は、地域医療機関(1級病院)に依存している。だが、多くの地域病院は薬が不足していて、例えば、脂質異常症薬(コレストロールを下げる薬)さえ足りない。地域病院で薬が購入できない場合、別の病院(3級病院)へ行く必要がある。ただし、多くの薬が診療報酬の対象とならないので、自己負担率が高くなるという。


健康保険は国民の“生命線”であり、この保証が揺らげば、政府に対する信頼が失われるだろう。


実は、個人の毎月の医療費補助カット分を「健康保険組合出資金」に充てる(a)という。これは、2021年、国務院(内閣)が打ち出した施策である。けれども、その出資金の使途が不明だという。


おそらくコロナ流行の発生地となった武漢市政府は、財政が相当苦しいのではないか。そのため、いち早く「医療保険改革」を実行に移した公算が大きい。今後、武漢市や大連市以外でも、同様な事が起こるのではないだろうか。


あるSNSユーザーは、以下のように指摘(b)する。武漢市の高齢者がなぜ激しく抗議するのか。なぜなら、同市は最初にロックダウンされ、血と涙を流した。一晩でロックダウンを解除した結果、ほとんどすべての人がコロナに感染し、多くの高齢者が死亡した。健康福祉の減額は高齢者を死に追いやり、政府の負担を減らすのが本当の目的ではないか、と手厳しい。


武漢市と大連市などでは、医療改革に抗議する退職者たちの「白髪運動」が未だ尾を引いているが、中国政府はその“後始末”に乗り出した(d)。デモ行進に参加した武漢の住民に、役人が次々と電話をかけ、まもなく逮捕するなど、まるで“白色テロ”のような状態になっているという。


ちなみに、国泰君安証券研究員の丁丹と呉宇擎の報告によれば、2022年1月から11月まで、「国民健康保険基金」の累積収入は2兆6576億4200万元(約52兆0898億円)で、累積支出は12兆1301億7400万元(約237兆7514億円)に達したという。つまり、約185兆6616億円の赤字である。


3月上旬に開かれる両会(全国人民代表大会と政治協商会議)では、「医療保険改革」など重要な課題を避けて通れないのではないか。習主席は、第20回党大会で党・政・軍の権力を一手に握った。そのため、これから国内で発生する様々な問題について全部の責任を負う必要があるかもしれない。


〔注〕


(a)『万維ビデオ』「同じ日に武漢と大連で『白髪運動』が勃発し、習近平はそれが“長引く”ことを恐れている」(2023年2月15日付)


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