中国資金提供のダム 比先住民ら反対
Japan In-depth / 2023年2月25日 23時0分
地元の報道などによるとNCIPは先住民族のコミュニティーを回って指導者や実力者に対して「ダム建設推進を説得」するばかりで先住民の反対の意思をないがしろにし、建設会社などのまるで「スポークスパーソン」の役割を担ったことが不満を強めている一因だという。
自分たちの権利擁護が十分に行われず、反対運動があるにも関わらず中国企業とフィリピンの「メトロポリタン上下水道システム会社」などによる建設の進行を中断させる手段が尽きたことがマニラの大統領官邸までのデモ行進となった。
しかし先住民や農民、漁民、活動家からなるデモ隊は大統領宮殿近くで警察の侵入阻止線に阻まれて宮殿には近づくことができず、マルコス大統領もデモ隊に反応することはなく、失望感が広がったという。
デモ行進のスポークスマンは「この抗議運動は単に私たちの為だけではなく環境と全ての人々の福祉の為の戦いである。ぜひとも支持してほしい」とメディアに語っている。
■関係各省庁にもデモ行進
デモ隊は大統領官邸に至るまでの途上でダム建設に関わる政府の各省庁などにも立ち寄り反対の声を改めてあげた。
これに対し公共事業道路局はケソン州で洪水制御プログラムに約9万ドルを当て、付近のアゴス川の浚渫工事にも着手していることをあきらかにした。
またカリワダムが完成しても周辺の先住民や住民の居住地区が水没することにはならないとNCIPは話している。
ただ環境保護運動活動家らからはカリワダムの建設工事に伴いカリワ周辺の森林保護区や国立野生生物保護区に影響や損害を与える可能性を指摘している。
マルコス大統領は1月に中国を訪問して習近平国家主席と首脳会談を行いその席で中国からの経済的支援やインフラ整備などを歓迎する姿勢を示した。
しかしその一方で南シナ海における領土問題では中国を念頭に「1インチも譲らない」と強い姿勢を打ち出していることを前提に「友好的協議で問題を適切に処理する」ことで合意した経緯がある。
しかしその後も中国によるフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内への中国海警局の船舶や民兵が乗り組んでいるとされる漁船などの侵入やフィリピンの海軍や沿岸警備隊船舶への妨害や嫌がらせが相変わらず続いている。
マルコス大統領にとって中国からの融資を受けたインフラ整備の一環でもあるマニラ首都圏などの水不足解消を目的としたカリワダムの建設はなんとしても完成させたい事業であることは間違いない。このため今後マルコス大統領は環境に最大限の配慮をしながら周辺の先住民や住民への補償などを含めた説得工作を加速することが求められてくるだろう。
トップ写真:中国大使館の外で行われる南シナ海での中国の海洋活動に対する抗議デモ(2022年7月12日、フィリピンの首都マニラ)出典:Photo by Ezra Acayan/Getty Images
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