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日本はスマホ奴隷の国なのか

Japan In-depth / 2023年3月2日 16時32分

 電車が駅に停まり、降車する人たちもスマホの画面を眺めながら、歩いていく。ラッシュ時に新宿駅の中央線や山手線のプラットホームから階段を昇降する混雑のなかでも、周囲の人にぶつかりながら、なおスマホの画面をみつめて歩く人も多数いた。まさにスマホの虜になったという感じなのだ。スマホを手にしない私にとって、この人たちはスマホの奴隷にさえみえてしまうのである。


たまに隣席の乗客のスマホの画面をちらりとみると、アニメとか映画とかゲームが映っている場合が多い。こちらが横目で数秒間も眺めていると、相手はすぐに不快そうな表情をみせて手にしたスマホの角度を変えてしまう。


 ある日、池袋の人気の高い甘味店で友人と歓談していたとき、隣の席に母と娘らしい二人の女性が座った。30代後半にみえる母と12、3歳にみえる娘と、いずれもきちんとした服装だった。


ところがこの二人はテーブルにつき、注文をするや否や、それぞれスマホを取り出して、テーブルにおき、一心不乱に眺め、操作するのだ。30分以上もの間、お互いに一言も言葉を発しない状態のままなのにびっくりした。母子が喫茶店で甘い物を食べる際に相手に一言も言葉をかけず、スマホをみつめたまま、というのは、やはり異常に思えた。


 スマホの過剰な使用が人間の機能に悪影響を及ぼすことを証した調査や研究は日本でもアメリカでも多数、発表されている。アメリカではワシントン郊外にある世界一の医学の基礎研究機関「国立衛生研究所(NIH)」がスマホ依存が中高年の認知症を広げ、子供たちの脳の成長を阻むという調査結果を公表している。


 日本でも東北大学からスマホの使用時間の長い子供たちの大脳には発達の遅れがみられるという研究結果が発表された。その他にも年齢を問わず、スマホ過剰使用が人間にもたらす多様な障害はすでに国際的にも証明されているといえよう。


 もっとも医学の研究に思いをいたらす必要もない。ごくふつうの常識で考えれば、スマホにしがみつくことが人間本来の機能をゆがめることはすぐにわかる。人間がスマホに没入することは人間本来の他者との接触や独自の学習、さらにはスポーツによる肉体の活用など現実を遮断することを意味する。要するに実際の人間としての自然な活動を停止することなのだ。


そして小さな画面に映る仮想(バーチュアル)の世界に埋もれることなのだ。


 人間が本来、生きていくうえでの現実の体験を一時停止する。これこそがスマホへの没入だといえよう。実際には存在しない仮想の世界の奴隷になってしまうとさえいえる。だから私は電車に乗って、周囲の乗客がみなスマホにしがみついている光景をみると、優越感を覚える。自分は仮想ではなく現実の世界に生きている、という実感である。


 さあスマホ愛用のみなさんはこんな感想をどう思うだろうか。


*この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに掲載された古森義久氏のレポートの転載です。


トップ写真:日本の地下鉄でスマホを操作する若い女性(イメージ)


出典:Photo by Rich Legg/GettyImages


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