在台米軍人数の拡大と北京の戦争準備
Japan In-depth / 2023年3月3日 23時0分
なお、台湾の「海峡安全保障研究センター」主任の梅復興は、「今まで米軍の台湾での訓練はほとんど特殊作戦部隊や精鋭部隊で行われていたので、“地味”に実行できた。それは、米政府のこれまでの『あいまい戦略』に合致していた」指摘している。
一方、習政権は、昨年10月の第20回党大会で「国防動員体制の改善」を提案して以降、各省市が“国防動員事務所”を設置し、国防動員や予備兵力の増強に取り組んでいる(c)。
昨年12月15日には、中国初の“国防動員事務所”である「福建省国防動員事務所」が開設された。同月28日、北京市では(人民防空弁公室を母体とする)「北京市国防動員弁公室」が設立されている。
台湾の国立政治大学国際関係研究センターの宋国誠によれば、中国共産党が各地に“国防動員事務所”を建設した狙いについて、動員権を地方レベルに委譲する、つまり戦時体制を整えることにあるという。そのレベルとは、物資、人員、装備などの集中的な派遣と管理である。
時事評論家の江峰は、中国共産党のこうした機関は非常に強力であると指摘した。最近、山東省では、すでに防空プロジェクト、防衛管制避難基地、新兵を教育訓練するためのレッスン基地の建設計画が進んでおり、山東省莱蕪市、広東省汕頭市では“国防動員事務所”が生産組織も担当しているという。
また、最近、習政権は「戦時刑事訴訟法」の適用を調整し、司法機能の強化を図っている(d)。北京が戦争準備のシグナルを発する動きは、台湾海峡で戦争が勃発した場合、当局が軍事管制を敷き、国内の軍事・民生不安に対処することが目的だという分析もある。
同法の規定によると、軍隊は戦時中の「刑事訴訟」―強制措置、申告、捜査、起訴、裁判、執行など―で司法機能を発揮することができるという。
ただし、このような北京の動きはいわゆる戦時体制に備えるためのものであり、現状では、実際の戦闘動員ではなく、威嚇やデモンストレーションなどのジェスチャーに過ぎないのではないかと一部専門家は見ている。
〔注〕
(a)『The Wall Street Journal』
「米国は台湾の駐留を拡大し、中国の脅威に対抗するため台湾軍の訓練を強化」
(2023年2月24日付)
(https://cn.wsj.com/articles/%E7%BE%8E%E5%9B%BD%E5%A2%9E%E5%8A%A0%E5%9C%A8%E5%8F%B0%E5%86%9B%E4%BA%8B%E9%83%A8%E7%BD%B2-%E5%8A%A0%E5%BC%BA%E8%AE%AD%E7%BB%83%E5%AF%B9%E6%8A%97%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%A8%81%E8%83%81-7f67a19d)。
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