ボリビアのリチウム開発権獲得 中国影響力増大へ
Japan In-depth / 2023年3月19日 18時0分
ラパスのサンアンドレス国立大のある政治学者は「リチウムの採掘・抽出は100パーセント国家が行うことを大前提とし、外国企業が参加してはならないという法律に反する」としてアルセ政権が中国企業連合を選定したことは「違法である」と指弾する。
一方、ボリビア・リチウム公社は「2カ所のプラントが完成すれば、純度99.5パーセントの電池用炭酸リチウムをそれぞれ年間最大2万5,000トン生産することが可能になる」と予測。
アルセ大統領も「ボリビアのリチウム工業化の時代がようやく始まる」と強調、「2025年第1四半期に国産原料を使用したリチウム電池の輸出を開始することが目標である」と楽観的見通しを表明している。
■“リチウム・トライアングル”支配狙う中国
ボリビア政府は落札の経緯や協定の詳細について明らかにしていない。野党勢力は協定締結の条件をすべて公開するよう要求、公開しないなら協定の実施を阻止する構えを見せている。さらにプラント建設予定のポトシやオルロ両県では先住民を中心とする市民団体が反対運動を展開する動きもあると伝えられる。
リチウム鉱床開発によって先住民の伝統的な生活が破壊されるとの懸念や環境汚染問題も指摘されている。ボリビア憲法が「天然資源開発に関し所有権は国家の独占的な権限」とした上で「地域住民との協議の下でのみ実施される」と規定されていることも、地元住民の反対が強い理由とみられる。
実際、2019年にエボ・モラレス政権がリチウム開発に関しドイツ企業との間で協定を結んだものの、現地住民の間で猛烈な反対運動が起きたことなどから、同協定がご破算になったこともある。
ただ、アルセ現政権は中国との強い結びつきがある上、リチウムの工業化を急ぎ、2025年の総選挙での勝利に結び付けたいとの思惑もあるといわれ、力で反対派を抑え込む可能性も取りざたされている。
ボリビア、アルゼンチン、チリ3国の国境地帯には世界のリチウム埋蔵量の約半分が埋まっているとされる“リチウム・トライアングル”がある。中国がその独占的支配を狙っているといわれる中、ボリビアでの動向に関係各国の注目が集まるのは確実だろう。
(了)
トップ写真:「ボリビアのウユニ塩湖にあるリピパイロットプラントでバンドフィルタープレスを操作する作業員」出典:Photo by Gaston Brito Miserocchi/Getty Images
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