バイデン大統領をどう評価するか その3 不法入国者の激増
Japan In-depth / 2023年3月20日 18時0分
それでは、バイデン政権の国内政策に目を転じよう。
大統領自身は教書演説では国内の雇用の増大を最大成果として強調した。だが、その成果を帳消しにするかのように、アメリカの記録破りの高インフレはなお低下していない。8%、9%という異様に高い数字が減っていないのだ。
さらに記録破りの不法入国者の激増も社会の激しい不安要因となった。バイデン大統領がトランプ前大統領とは対照的にメキシコ国境からの中南米出身の不法入国者たちの大量流入を許容した結果だった。
バイデン大統領が民主党内の過激な左派に押されて、人種問題や教育、治安、社会などの諸課題で極端なリベラル方向へと傾くことも保守層や中間層の反発を招いてきた。
要するにバイデン大統領は国内政策でもやはり負の部分が大きいのである。アメリカ国民のバイデン政権への態度は最近のAP通信などの世論調査で「この国は誤った方向へ進んでいる」と答えた人が71%にも達した事実に集約されるだろう。大統領への支持の一連の世論調査でもバイデン氏への支持40%、不支持50数%という数字はトランプ氏を含めて歴代大統領の同じ時期よりはずっと低い。
こうしたアメリカ国民のバイデン大統領に対する負の評価の背景には同大統領自身の統治能力への疑問という重大な問題が広がっていることも指摘しておかねばならない。現在80歳のバイデン氏は単に高齢だからというだけでなく、年来の失言、放言の悪癖にさらに拍車がかかってきたのである。
バイデン大統領はつい最近でも、すでに死亡した下院議員がまだ健在と勘違いして、公式の会合でその議員の名前を呼び続けた。また、自分は副大統領としてアフガニスタンの戦場を視察したと繰り返し言明したが、実際にはそんな記録はなかった。アフガニスタン戦争とイラク戦争を勘違いして、延々とまちがいの現地視察の回想を続けた。こんなミスが頻発しているのだ。
だからホワイトハウスではバイデン大統領の記者会見のような自由な発言の機会を極端に抑えている。大統領がどんな失言をするかわからないという懸念からである。
(つづく。その1、その2)
**この記事は月刊雑誌『正論』2023年4月号に載った古森義久氏の論文「国際情勢乱す米国政治の混迷」の転載です。
トップ写真:ホワイトハウスを出発しデラウェア州に向かうバイデン大統領 (2023年3月17日 アメリカ・ワシントンD.C.)出典:Photo by Anna Moneymaker/Getty Images
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