コオロギ給食はまずかった(上)今こそ「NO政」と決別を その1
Japan In-depth / 2023年3月23日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・徳島県公立高校で食用コオロギの粉末を使ったコロッケを給食に出した話がネットで拡散。
・コオロギ事業に補助金が出て、予算に6兆円以上が使われていた」という事実でないツイートが拡散。
・事実に合致しない「ごり押し批判」は感心しないし、個人攻撃にはまったく同調できない。
個人的な話題から語り始めることをお許し願いたいが、私の亡父は農業問題を専門とするジャーナリストであった。『全国農業新聞』の編集長からフリーに転じたというキャリアを持つ。
日本政府の農業政策には一貫して批判的で、無策ぶりを揶揄した「NO政」というのは、父の造語であるらしい。
父子だからと言って、全面的に意見が一致していたわけでもないが、最近の農業・食糧事情を見るにつけ、我が親ながら、うまいことを言ったものだ、という気分にもさせられる。もちろん笑い事ではないのだが。
第一番目に取り上げたいのは、最近よくも悪くも注目されている、昆虫食についてである。
2月28日、徳島県内の公立高校で、食用コオロギの粉末を使ったコロッケを給食に出したという話題がネットで拡散されたことから、学校にクレームの電話が殺到したという。
この高校には食品科があり、主任の女性教諭が昨年、生徒と一緒に食用コオロギを試食したところ、あまりの美味に感動し、食糧問題を考える一助にもなるとして、昨年11月、そして前述の通り今年の2月と、2度にわたって「コオロギ給食」を供したという。
学校側の説明によれば、食べるか否かは生徒の自主性に任せたし、甲殻類アレルギーのリスクがあることは保護者に伝達済みであり、かつ保護者からのクレームはなかった。
しかしながら(おそらくは大騒ぎになってしまったので)、3回目の予定は今のところないとしている。
それからも、ネットでは賛否両論が飛び交ったが、著名なインフルエンサーが相次いで否定的な投稿をしたこともあってか、昆虫食そのものの旗色が悪くなった。
世論調査でもコオロギなど「食べたくない」と回答した人が大多数で、この件については次回もう一度見るが、陰謀論じみた「コオロギ食ごり押し」説が流布しているようなので、今回はこの問題を軸に話を進めたい。
事の発端は2月18日に、
「コオロギ事業に補助金が出ていた。予算に6兆円以上の血税が使われていました」
というツイートに、数千の「いいね(=高評価)」がついて拡散したこと。
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