移民労働者と技能実習生(下) ポスト・コロナの「働き方」について その2
Japan In-depth / 2023年4月18日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・「夕張メロン」が減産。中国人技能実習生がコロナ禍で来日できなかったことが原因。
・今や先進国の産業は移民労働者なくして立ちゆかなくなった。
・肌の色や言葉が違う人たちとも「同僚」として共存できるような日本人になって行かないといけない。
2021年6月、あの「夕張メロン」が、8万玉の減産になる見込みであると『日本農業新聞』などが報じた。その名の通り北海道夕張市の名産品で、2016年の出荷額はおよそ23億6500万円。同市の農業生産額の8割を占めている。ステータスも高く、2022年5月の初競りでは、1箱2玉入り200万円で落札された。
それがどうして減産を余儀なくされたのかと言うと、労働力の中核をなしていた中国人の技能実習生が、新型コロナ禍で来日できなくなったためだ。
もともとメロン農家は(ご多分に漏れず)高齢化と後継者不足により、戸数・作付面積ともに漸減傾向にあった。同じ理由で慢性的な人手不足であり、中国人の技能実習生なくしては通常の生産高を維持できなかったのである。
JA夕張では、日本人アルバイトも募集したのだが、当時の北海道の最低賃金(時給861円)で真夏の重労働では、全く人が集まらなかった。この年の9月に、最低賃金が時給920円に引き上げられたが、これでも日本人を雇うのは難しいかも知れない。
前回、技能実習制度について、本国では習得できない技能を授ける、という美名の元に、実態は最低賃金すら保障されない単純労働力としか見なされていない、と述べたが、これも端的な一例だと言えるのではないか。
ただしこれは、夕張市はもとより、日本だけに見られる現象ではない。
イタリア料理に欠かせない野菜と言えばトマトだが、かの国のトマト農園では、アジア系の労働者が「奴隷労働」を強いられていると、前々から問題視されている。具体的には、給与は最低賃金の半額以下で、病気になっても医者に診てもらえない、など、確かに劣悪な環境であるようだ。
ちなみに2022年10月より、大半のEU加盟国において、最低賃金は時給12ユーロ(1800円弱!)に引き上げられた。日本も早く最低賃金を時給1000円以上にしないと、国民生活が上向くことはないだろうと思えるが、これについては稿を改める。
いずれにせよ、今や先進国の農業は、移民の労働力によって支えられていることは疑う余地がない。
この記事に関連するニュース
-
有本香の以読制毒 バイデン大統領「日本人は外国人嫌い」発言、岸田政権〝一喝〟できない理由 ネットで広まる「移民拡大」と「親族のビジネス」の話
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月14日 15時30分
-
ニュースの核心 バイデン氏の「日本人は外国人嫌い」に現れた差別感 岸田政権、中身を明らかにしない米への抗議…裏で画策する「移民受け入れ」
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月11日 10時0分
-
「外国人嫌いの国は経済が停滞する」は本当か いや、日本には当てはまらないシンプルな理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月8日 6時10分
-
人手不足が深刻な日本は外国人労働者をうまく活用できるのか―中国メディア
Record China / 2024年4月30日 6時0分
-
日本が外国人労働者の受け入れ方針を大転換、「現代版野麦峠」から脱却か―香港誌
Record China / 2024年4月29日 9時0分
ランキング
-
1大阪・枚方市のマンションで19歳の女子大学生が刺され死亡、26歳無職男を殺人容疑で緊急逮捕
読売新聞 / 2024年5月18日 23時13分
-
2「殺害も頼まれた」 那須2遺体 「指示役」を殺人容疑で再逮捕へ
毎日新聞 / 2024年5月18日 23時0分
-
3能登観光復興へ「輪広げる」 石川・七尾の道の駅が再開
共同通信 / 2024年5月18日 21時40分
-
4つばさの党の妨害15回以上 選挙カー追い回し 運転役ら立件も検討
毎日新聞 / 2024年5月18日 18時30分
-
5いったい誰が?万博「ミャクミャク」モニュメント、今度は落書き被害
毎日新聞 / 2024年5月18日 17時3分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください