突破口が見えぬ北朝鮮の食料危機
Japan In-depth / 2023年5月23日 23時0分
結局、農民は、水をバケツなどに汲んで田畑に撒くしかないが、当然のことながら重労働だ。その水源である井戸水すら減りつつあり、農業用水も心配だが、自宅で使う水道水も1週間に3〜4日しか出ない状況だ。
■梅雨時は洪水のおそれも
今年7月頃からは、かなりの確率でペルー沖の海水面の温度が上昇する「エルニーニョ現象」が起きると言われている。これにより、朝鮮半島の夏は降水量の増加が心配されている。
2020年から昨年までは、エルニーニョとは反対のラニーニャ現象が起きていたにもかかわらず、降水量が増加していた。エルニーニョとなる今年の夏は、さらに降水量が増える可能性が高い。そうなれば脆弱な防災施設しかない北朝鮮では、またもや大洪水が発生する可能性がある。
■金正恩政権の食糧専売政策が破綻
金正恩政権は、2020年に新型コロナウイルスが発生した後、主食のコメとトウモロコシの流通体系を大きく変える試みを始めた。機能をほぼ失っていた国営の「糧穀販売所」の復活を目論んだのだ。
市場より20~30%程度安い価格を設定するとともに、市場での販売量と価格に強引に介入して抑制を図り、2023年1月からは市場での食糧陳列販売さえ禁止した(4月から市場でのごく少量の販売は黙認されている)。
国家による「食糧専売制」を目指したのだが、「糧穀販売所」で購入できるのは月1回、一人当たり5~7キロ程度に過ぎず、必要量には大きく届かなかった。
金正恩政権はさらに、国営企業への食糧配給復活にも動いた。コロナ防疫のための統制で稼働が低下していたにもかかわらず、職場離脱者や欠勤者、他地域への無断移動者を大々的に取り締まり、出勤のインセンティブとして食糧配給を実施したのである。出勤する労働者本人に限り、1カ月に5~7キロ程度を支給したのだ。特に男性には何らかの職場に登録、出勤させる措置を取った。ところが、その結果、多くの国営企業では必要数以上の労働者を抱えることになった。
このように、金正恩政権は、強引に「食糧専売制」への転換を図り、国営企業の配給制に乗り出したのだが、それはそのまま国が責任を持って確保すべき食糧の増加を意味し、飢餓状態を加速させた。
5月に入り、各地から飢饉の広がりが伝わってきているのは、国家保有食糧が底をついた地域が増えているためだ。つまり、「糧穀販売所」や国営企業で、食糧を供給できない事態が発生しているのである。
こうした飢餓状態が広がる中で、今月6日から7日にかけて、北朝鮮住民が漁船に乗り西海(黄海)の北方限界線(NLL)を越えて脱北したことがわかった。NLLを越えて脱北したのは公開された事例基準では2017年7月以来約6年ぶりだ。
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