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「天下第1の村」華西村の光と影(下)

Japan In-depth / 2023年6月5日 11時0分

多くの村民は、現金が手に入らないという苛立ちからか、休日に村内の「龍希国際ホテル」に多額の「お札」を持って行く。そして、「1泊の宿泊で1万2000元(約24万円)以上」も使うという。


つまり、村民が華西村で稼いだカネは同村にしか流れない。これは村の人達にはおなじみの“暗黙のルール”で、呉仁宝の時代から適用されている。


たとえ村人が自分のカネで華西村外の不動産を買おうとしても、原則、華西集団が開発した不動産しか買えない。もし、他で不動産を購入した場合、それが発覚した時点で村委員会から外され、配当もなくなるという。


呉仁宝が亡くなった翌年の2014年、鉄鋼業に長年依存してきた華西村の収益は、2007年の半分の125億元以上にまで激減した。華西村「2代目」の呉協恩は、金融投資やハイテク産業に傾倒したとされる。


例年、華西村は周辺の村々にポスターを貼り、村民に華西への預金を呼びかけ、3年以上の定期預金は金利10〜15%(銀行は約4%)を約束する。村委員会と親しい個人は最大30%の金利まで付く。


この勧誘で、江陰市はもちろん、上海市や黒龍江省からも多くの人が華西村に預けに来るようになった。ただし、華西村の金融業は“違法な資金調達”だと指摘されている。


あるネットユーザーによると、一昨年、2月24日までに資金を払い込んだ投資家だけが元金に加えて利息を得たが、その利息はわずか0.05%で、華西村が以前約束した10%とはほど遠いものだったという。


また、村民資金決済の現場では、「華西連合防衛」の制服を着た数十人の警備員が群衆の中を徘徊し、その数は決済業務のため会場にいる村民数を超えたこともあったという。


華西集団の資金繰りの悪化、倒産の危機、華西村の終焉に関する話題は、2019年以降、中国のインターネット上や市民の間で一般的になっている 。


同年3月13日、江蘇省無錫市の人民政府事務室で発行した「第7回市長事務会議通知」という文書によると、この会議での議題は「江陰華西集団の資金流動性リスクに関する報告を聞く」であった。


その後、呉協恩・華西村党委員会書記(兼華西集団会長)は、メディアのインタビューで「華西集団の資金流動性に問題がない」と発言している。だが、翌2020年7月10日、江蘇華西村股份有限公司は、華西集団が無錫国連産業投資有限公司と投資協力契約を締結する意向だと発表した。


実際、中国のメディアは、共産党宣伝部から華西村のネガティブなニュースを流すのを禁じられている。習近平政権としては、華西村という社会主義実験の“成果”を残しておきたいのだろう。


(上はこちら)


〔注〕


(b)『BBC中文』


「華西村:中国共産主義実験の崩壊」


(2021年3月30日付)


(https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-56563870)


本記事は、上記事『BBC中文』「華西村:中国共産主義実験の崩壊」(2021年3月30日付)の翻訳です。


トップ写真:中国江蘇省無錫市華西村の住宅地 出典:jia yu/Gatty Images


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