アメリカはいま――内政と外交・ワシントン最新報告その15 対中政策はなぜ変わったのか
Japan In-depth / 2023年6月12日 14時10分
こうした動きの結果、中国に関しては対中ワシントン・コンセンサスという言葉がよく語られるようになりました。中国に対しては超党派で警戒して抑止していかなければいけない、というコンセンサスが出てきているのです。
私も最近もずいぶんいろいろな中国関連のワシントンの会合に行きました。例えば、ヘリテージ財団という保守系のシンクタンクが中国研究で、アメリカと中国はいま新冷戦に入ったという調査報告書の発表会を開いたので、それに出ました。中国との新冷戦ではこういうことをやらなきゃいけないという政策提言の集まりでした。
その研究報告の中心になったのは、マイケル・ピルズベリーという人物です。日本で数年前に出た本『2049チャイナ』というタイトル(アメリカでは『100年マラソン』)の著者です。彼は中国の軍事問題に対する研究の大御所です。
▲写真:マイケル・ピルズベリー氏(2019年4月)
出典:Photo by Michael Kovac/Getty Images
この人は、自分も関与政策をやってきたけれども、間違いだった、と認めています。中国は抑えなければいけない。中国共産党というのは、中華人民共和国建国の1949年から100年後の2049年にはアメリカを追い越して、世界一の超大国になることを目指してきた。これは100年のマラソンなのだ、ということをいう。その証拠としていろいろな資料を挙げているのです。この人がヘリテージ財団の中心になって、中国に対してはこれからこういうことをやろう、という政策発表をしたのです。
私も米中関係をずっとフォローしてきたので昔からこのピルズベリーさんとわりあい交流があったのです。彼はこの報告書を発表したときに、中国は脅威だ。しかし、脅威だ、脅威だといっているだけでは何もならない。そのために何をするかということをいわなければいけない、と強調しました。
これは日本でもちょっと参考になる対応です。日本政府は北朝鮮がミサイルを撃っても、断固として許さないというが、ではどうするのかというと何もない。国際協調をしていくとか、アメリカとの同盟を強化するとかいって、日本として何をやるのかというと何も出てこない。これは戦後の日本が選んだ悲しい道だろうと思います。
(その16につづく。その1、その2、その3、その4、その5、その6、その7、その8、その9、その10、その11、その12、その13,その14)
*この記事は鉄鋼関連企業の関係者の集い「アイアン・クラブ」(日本橋・茅場町の鉄鋼会館内所在)の総会でこの4月中旬に古森義久氏が「アメリカの内政、対中政策――ワシントン最新報告」というタイトルで講演した内容の紹介です。
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