西側の対トルコ関係改善か
Japan In-depth / 2023年6月18日 18時0分
EU内には、トルコはイスラム教国であるととともに人口大国であり、トルコへの警戒感は根強いようだ。トルコにおける法の支配や司法の独立、報道の自由をめぐる状況にも懸念を抱いているようだ。現在、トルコのEU加盟交渉は事実上の凍結状態にある。
それでもEUはトルコと協力すべき分野では協力している。EUにトルコ経由で押し寄せる難民・移民問題への対応がその一例だ。
2015年の100万人を超える大量の難民流入で苦境に陥ったEUはトルコ政府に多額のお金を支払う見返りに、難民をトルコ国内にとどめ、地中海を渡ってのギリシャ流入をストップする”取引“を当時のエルドアン政権と行ったことが挙げられよう。
今回のトルコ大統領選で、クルチダルオール氏が党首を務め、少数派クルド人との連携を志向する、共和人民党を中心とする野党勢力が勝っていれば、EUはトルコのEU加盟交渉の実質的な再開に取り組み、関税協定の改定やビザ発給問題への対応を迫られることになっただろう。EUはトルコの野党勢力をより民主的だとみなしている。
エルドアン政権は、僅差ながら決選投票で勝利したことで、国民の信任を得たと考えており、国内では保守化の傾向を強めるだろう。対外政策では民族主義的な傾向を基調としながらも、国益増進のために西側とロシアの間でしたたかに立ち回るものとみられる。
國際情勢のリスクを分析するユーラシアグループのエムリー・ピーカー(Emre Peker)氏は「トルコの米国およびEUとの関係は緊張をはらんだ(ギブ・アンド・テークの)取引べースの関係が続くだろう」とニューヨーク・タイムスに語った。
ウクライナ戦争が続く中で、今後のトルコと西側の関係から目が離せない。
(了)
トップ写真:エルドアン大統領 2023年6月6日、トルコ のアンカラ
出典:Photo by Yavuz Ozden / dia images via Getty Images
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