剣道嫌いの剣道場床研究
Japan In-depth / 2023年6月29日 18時0分
前田英樹(株式会社五感代表取締役、剣道場建築床工房代表)
【まとめ】
・剣道は、床の違いで足への負担が全く違う。
・床環境の問題を解消できれば、内外の剣道普及の一助となりうる。
・日本産の木材や加工技術の素晴らしさを世界に知ってほしい。
足裏のまめ、やけど、かかとやひざの故障、ひどい場合はアキレス腱断裂・・・
これらのけがは剣道をする上で致し方ない事だと思っていませんか?かく言う私自身もその一人でした。
小学生で剣道を始め、高校生まで続けましたが度重なる怪我に辟易し、剣道の稽古が嫌いで仕方なかったのです。
稽古嫌いは剣道嫌いにすり替わり、剣道の嫌な記憶をそのままにやがて剣道から離れ、家業の材木商として様々な床素材と出会ってきました。
私が主に扱っているのは天然木から製材する、無垢の床材です。人間が生活の中で常に接している床面だからこそ、私が提案するのは五感にやさしい無垢フローリングです。
日頃、無垢フローリングと合板やウレタン塗装の床との違いをお客様に説明することが多くある中ではたと、体育館のウレタン塗装の床が思い浮かび、自分の剣道の怪我の原因は床にあるのでは?と思い始めました。
そんなとき、本格的な剣道場で稽古する機会がありました。そこで初めて、床の違いで足への負担が全く違うことを知りました。
その道場の床はクッション性が高く、優しさと温かみがあって思いっきり踏み込んでも足に負担が少なく、足腰の弱い年配の方、ブランク剣士でも安心して稽古ができる剣道場だったのです。
どうして同じ剣道の稽古でもこれほど足腰への負担に違いがあるのか、床材のプロとして気にならざるを得ませんでした。
それから日本国内や台湾の旧武徳殿などを始めとした、古くからある剣道場の研究に取り組みました。
研究と並行して、しばらく遠ざかっていた剣道も本格的に再開し、様々な床の道場で稽古をさせていただきました。
床の素材や構造など、多角的に剣道場床に向き合いたどり着いた答えは、「武道である剣道は体育館で稽古するものでは無く、剣道場で稽古することが本来の姿である。」ということでした。
どういうことかと申しますと、体育館は「シューズを履いておこなうスポーツ」をする場所であり、「素足でおこなう剣道」の稽古には不向きなのです。
体育館の床表面に施されている滑り止め効果が高い床の上で、すり足の練習をすること自体、そもそも不自然ということです。
さらに、足を強く踏み込む剣道では体育館の床は硬すぎ、剣士のカカトや腰を痛めてしまうこともあります。
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