日本の若者がタンピン化する日 住みにくくなる日本・最終回
Japan In-depth / 2023年7月4日 11時0分
しかしながら、共産党の指示通りに行動したのでは、富裕層や特権階級に奉仕させられるだけの話である。かの国では共産主義のタテマエから、就労は国家建設の基本であると教育されているのは、有名な話だ。一方では、かつてのソ連邦などと違って、グローバル経済の一角にしっかり食い込んでおり、搾取や格差の構造もはっきりしている。
逆に言えば、就労=国家建設への参加は共産党政権に屈服することで、それを「膝を屈する」と表現し、忌避したのである。「だから寝そべる」と。
個人的な感想を述べれば、賞賛する気にはなれないけれども、
「はたらけど はたらけど 猶わが生活(くらし) 楽にならざりぢっと手を見る」
という石川啄木の有名な歌と同じくらい、インパクトがあった。方向性は真逆だが。
真逆といえば、経済学者で人材派遣会社パソナの会長である竹中平蔵氏が、株式投資を呼びかけるサイトの中で、
「かつて日本人にあった〈辛抱強さ〉はなくなり、文句ばかり言う国民になってしまった」
などと述べている。なにが真逆なのかと言うと、
「30年間日本人の給料が上がっていないことに不平を言う人もいます」
などとして、
「自分の給料が不満なら、スキル・キャリアアップに向けて努力をしているのかを自分に問いかけるべきだと思います」
というのが締めくくりなの文言だが、私がこの連載はじめ様々なところで訴えてきた、
「最低賃金を大幅に引き上げ、非正規雇用者の労働環境を改善して行かない限り、わが国の貧困や格差の問題は解決の糸口さえ見えないだろう」
という考えとは、まったく逆の方向性を示している、との意味だ。
竹中氏は端的に、
「給料が上がらないのは自己責任。スキル・キャリアアップに向けて努力するか、さもなければ不平ばかり言わずに、安い給料でも辛抱すべき」
と断じているのである。
その評価は読者一人一人に委ねたいと思うが、ひとつ言っておきたいのは、私はつくづく、日本人は辛抱強いと思えてならない、ということだ。
この連載でも触れたことがあるが、フランスでは年金の受給額が目減りする政策が発表された途端に、全国いたるところでデモが組織され、その一部は暴動化した。英国では、コロナ対策で連日家に帰れないほどの激務を強いられたのに、物価高騰に見合う賃上げがなされていないとの理由で、医療関係者がストライキを決行した。
わが国の歴史をひもといても、江戸幕藩体制においては、年貢は基本的に「四公六民」であった。収穫した米の4割は年貢として召し上げられるが、あとの6割は農民が自分食べたり売って金に換えたり、自由にできた。ところが、江戸幕府の財政が傾いたことから、これを「五公五民」にしたところ、一揆が続発したのである。令和の現在、標準的なサラリーマン家庭において、社会保障費を含めた税負担は給与額の50%に迫ろうとしている。まさに「五公五民状態」だが、今のところ暴動が起きる気配すらない。
今後の展望だが、二つの方向性があり得ると思う。
ひとつは、国民が「辛抱の限界」に達したとして、過激な行動を起こす。
そしていまひとつは、中国の寝そべり族のように、自分たちに体制に反抗する気力などない、として、無気力な生き方を選択してしまう。
近頃の若い者は……といった表現は好むところではないけれども、様々な情報に接するにつれ、そこから「漢臭」が漂ってくるのを感じてしまい、梅雨が一段と鬱陶しく思える今日この頃だ。
トップ写真:イメージ 出典:Getty Images/pasotraspaso
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