故・安倍晋三さんに捧ぐ 「前人未到」の外交
Japan In-depth / 2023年7月8日 23時0分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・東郷和彦氏に聞く。安倍外交の評価、1つは「信念、アジェンダがあったこと」。「無責任平和外交」を直した。
・2つ目は「中国問題への対応」。日中関係は習近平来日寸前まで回復した。
・3つ目は「多様性」。豪・印を大事にして関係を強化した。
安倍晋三さんが亡くなってから1年。
近鉄西大寺駅前にて凶刃に倒れ、亡くなったこと、個人的には本当に悲しいことでもあった。故人とは内閣府の地方創生にかかわっていた時、ある衆議院議員事務所にいた時などで面識があり、そんなに関係深くはなかったものの、人としては尊敬していた。謙虚で丁寧な態度が印象的でした。
たしかに、政治面や経済面では安倍政治に対して色々と厳しい指摘をしてしまっているが、それは全体のごく一部であり、正当な評価ともいえない。政権の業績は歴史が評価するものであるものだとはいえ、考えるべきこともあるだろうと思った。そこで、今回は外交面について、専門家である東郷和彦氏にインタビューした。
【出典】東郷和彦氏HP
*東郷和彦氏プロフィール
静岡県立大学グローバル地域センター客員教授。1945年生まれ。1968年東京大学教養学部卒業後、外務省に入省。条約局長、欧亜局長、駐オランダ大使を経て2002年退官。2010年から2020年3月まで京都産業大学教授、世界問題研究所長などを務めた。
■「前人未到」「200点」の外交
筆者:東郷さんに伺います。安倍首相の外交の評価はどうなのでしょうか?
東郷氏:綺羅星のアドバイザーをプラグマティックに配置しました。そのアドバイザーから、様々な情報を聞く能力と取捨選択が安倍さんのポイントでした。安倍外交は前人未到の業績を成し遂げたといってよいでしょう。
筆者:その特徴は何だったのでしょうか?
東郷氏:3つあります。第一に、信念、アジェンダがあったことです。戦後の憲法9条が持つ外交から現状外交に転換したことです。いわゆる「無責任平和外交」を直したという業績です。これが一番難しい問題であって、この問題を解決することによって、そうしたメンタリティを助け出すことができるようになりました。集団的自衛権の解釈変更はその意味で凄いことです。
第二に、中国問題への対応です。野田政権が尖閣諸島を国有化しました。これに対して中国は核心利益に入れてしまったのです。しかし、安倍首相は中国と少しづつ対話をしていきました。「一帯一路に関心」とまで発言し、それに対して習近平が笑顔になったこともあったのです。日中関係は習近平が来日寸前まで回復したのです。そして、これに対してアメリカも反発しなかったのです。そこがポイントです。
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