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「セメント王」浅野総一郎物語⑤ 渋沢栄一との出会いは

Japan In-depth / 2023年7月20日 11時42分

渋沢栄一は既に経済御所。その部下は、その誘いを断る男にとまどいながら新鮮に感じました。「わかりました。大塚屋さん、渋沢にはその旨お伝えします」。


「無愛想な言い方でしたが、私は好感が持てました」。部下が報告すると、渋沢はますます総一郎に興味を持ちました


「俺と会うより、仕事をするのが大事というのは面白い男じゃ。日本を近代国家にするには、志を持った勤勉な商売人が重要だ。夜でもいいから仕事の悩みなんかあれば、来るように伝えてくれ」。


それから数日後の午後10時。総一郎は渋沢邸の前に立ち、門を叩きました。出てきたのは家政婦です。「大塚屋です。渋沢さんに会いに参りました」。


「旦那様はお休みになられました。今日は勘弁していただけないでしょうか」。戸惑う中。


「夜に来いと言ったから来たんです。それでは約束が違うじゃないですか。私にとって夜は11時過ぎからです。10時は宵の口ですと、渋沢さんに伝えてください。天下の渋沢栄一が嘘をついたのですか」。


総一郎が夜中に大きな声を張り上げ、家政婦は困っていました。玄関が何やら騒がしい。寝床についたばかりの渋沢は起き上がり、着替えして玄関にまで出てきました。


「どうも失礼しました。それにしてもこの時間の訪問。あなたは、噂以上に行動力がありますね。結構なことですな」と笑い飛ばした。そして総一郎を洋風の応接間に招き入れた。2人はお茶を飲みながら話し込んだ。


「きみにとっては、今はまだ宵の口なのかい。いったいいつ寝るのですか」


「午前零時に寝て、4時には起きます」


「4時間しか寝ないのか」


「それで十分です。人間は4時間以上寝ると、バカになります」。


渋沢は別れ際に「あなたは腕で飯を食べるように仕事をなさっていますが、それをこれからも続けてください。偉くなると、自分が動かずに部下に指示ばかりしている人が多いのですが、上に立っても、自ら行動することが大事です」と言いました。


総一郎は感心しました。「腕で飯を食べる」いい言葉だ。どんなに偉くなっても、自分で働こう。汗をかいて働くことこそ、俺の生き甲斐だ。その後、渋沢は総一郎にとって事業拡大の後ろ盾となりました。


(⑥につづく。①、②、③、④)


トップ写真:渋沢栄一(右)1915年ごろ


出典:Photo by Buyenlarge/Getty Images


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