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政治とスポーツは“別物”ではない事情 インドネシアの極端なイスラエル嫌い

Japan In-depth / 2023年7月24日 11時7分

★U20ワールドカップの開催資格もはく奪





イスラエル選手団への異常なまでの嫌悪は何も今回の「ワールド・ビーチゲーム大会」に始まったことではなく2023年5月にインドネシアで開催予定だった国際サッカー連盟(FIFA)が主催するU20(20歳以下)の選手によるワールドカップでも同様の事態が起きたのだった。





インドネシアではサッカーは国民的人気のあるスポーツだけに中東からのイスラエル選手団も参加する大会をインドネシア側はなんとかして開催しようと努力した。





「イスラエルチームの試合は無観客とする」「イスラエルとの対戦だけは隣国シンガポールで開催する」などだが、いずれもFIFAの拒絶に遭い、最終的に開催中止に追い込まれたのだった。





U20インドネシア代表の選手団のみならず、圧倒的なサッカーファンの落胆と怒りは大きかったが政治的判断を覆す国民的運動には発展しなかった。「イスラム教徒」という多数派の意向が何よりも優先された結果だった。





FIFAはインドネシアに代わって南米アルゼンチンで開催した。





★初代大統領の決断が今も根を引く





インドネシアのこうしたスポーツの分野に大きな影響を与える「イスラエル嫌い」は、実は独立の父で初代のスカルノ大統領の決断に基づいている。





スカルノ大統領は同じイスラム教徒であるパレスチナ人を支援するためにパレスチナ独立を支持し「和平が実現するまでイスラエルを承認しない」ことを公言、以後これがインドネシアの対イスラエル政策の原則となったという経緯がある。このためインドネシアとイスラエルは現在に至るまで外交関係はない。





U20ワールドカップ、ワールド・ビーチゲーム大会のいずれのケースもこの原則に従ったものだが、実はもっとドロドロした政治的な背景があるとの見方が有力だ。





スカルノ大統領の長女メガワティ・スカルノプトリさんは第5代大統領であり、現在国会の最大与党「闘争民主党(PDIP)」の党首でもあり、その政治的影響力は大統領職を去った今も絶大だ。





そのPDIPがスカルノ大統領の精神を持ち出してイスラエル拒否を訴えたのだった。ヒンズー教徒が多数を占めるバリ州の知事はPDIPの党員であり、その指示には従う以外の方法がなかったというのだ。





★来年の大統領選も視野か





インドネシアは2024年に大統領選挙を迎える。現職のジョコ・ウィドド大統領は3選禁止規定で出馬でないが母体であるPDIPからは各種世論調査で常に高い人気を誇るガンジャル・プラノウォ中部ジャワ州知事が大統領候補に指名されている。





そのガンジャル州知事はU20開催が中止に追い込まれたことに関して「インドネシアは原則に従ったまでだ」という趣旨の発言をしてPDIPの方針に賛同を表した。





しかしこの発言は無党派層やサッカーファンの反発を招き、ガンジャル知事の人気が一時的に下落する事態を招いたのだった。





ガンジャル知事にしてみれば本人の意向とは別に大統領選で地盤となるPDIPという所属政党の意向に反することはできなかったのだろう。





このようにインドネシアのスポーツ界の反イスラエルという風潮は政党や大統領選も関連するなど根が深く、深刻だ。





トップ写真:2016年ベトナムで開催されたAsian Beach Games閉会式(2016年10月3日ベトナム・ダナン)出典:Photo by Robertus Pudyanto/Getty Images




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