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米国疾病罹患率・死亡率週報(MMWR)誌に掲載された再感染の「危険性」に関する情報の正しい解釈について

Japan In-depth / 2023年8月28日 11時0分

MMWRには、これらのデータの解釈がDiscussionとして書いてありました。





今回の再感染は、18-49歳の若年層が主たるもので、この年齢層では多要因(ワクチン接種適応が遅くなったこと、ワクチン接種率がそもそも低いこと等)などの可能性があると論じられていました。





更に、再感染は、一般の感染症例と比較して、入院または死亡した人においては発生頻度が低いという点も論じられていました。これは、前回の感染によって誘導された免疫が、その後の感染に対するよりも重篤な転帰に対する防御に優れているというエビデンスと一致していますし、再感染による重篤な転帰のリスクは、ワクチン接種によって減少させることができるとも論じられていました。残念なことに、今回の解析ではワクチンの有効性は評価されていなかったのです。





彼が懸念したハイブリッド免疫に関しては、NEJM(New England Journal of Medicine)誌でも過去の感染と最近のブースターワクチン接種によるハイブリッド免疫が最も強い防御効果を示すと評価されています(3)し、Journal of Infection Prevention誌の最新論文では、ハイブリッド免疫は重症化に対する強力な防御をもたらすという知見もあります(4)。ハイブリッド免疫が危険という懸念も該当しないことになります。





これらを彼に伝えると、「データのつまみ食いはだめなんですね。反省して精進します。」との回答がありました。





最後に彼にお伝えしたのは、自分の考えを支持する証拠だけに注目し、反証を無視する無意識の傾向を確証バイアスということ、これを回避するのが科学者として非常に重要であること等をお伝えしました。自分の思い込みによる論の展開であれ、確証バイアスに基づいた内容であれ、チェリー・ピッキング(数多い事例の中から自論に有利な証拠のみを並べ、それと矛盾する証拠を隠したり無視する行為のこと)(5)は回避すべきであるということです。





(了)









▲写真 帝京大学大学院公衆衛生学研究科・ナビタスクリニック川崎小児科 高橋謙造(筆者提供)





<参考文献>





(1) Trends in Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Reinfections and Associated Hospitalizations and Deaths Among Adults Aged ≥18 Years — 18 U.S. Jurisdictions, September 2021–December 2022. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/mm7225a3.htm





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