ニューヨーク・タイムズのトランプ恐怖症
Japan In-depth / 2023年9月3日 17時0分
ところがこの会議の成果や意味について報じたニューヨーク・タイムズの8月19日付の記事はこの3国合意がトランプ氏の大統領再選に備えての防護策なのだとして、以下の骨子を述べていた。
「今回の3国合意は北朝鮮と中国の脅威を念頭において、達成されたが、実はもう一つ名前の明記されない要素があった。それはドナルド・トランプだった」
「来年の大統領選挙でトランプ氏が当選して、大統領に戻る可能性を考えて、いまの時点でアメリカにとって重要な日本と韓国との同盟関係を強固にしておく必要があるのだ」
「トランプ政権の4年間、日本と韓国はトランプ大統領が両同盟国との長年の安全保障の絆や経済の協力を削減や撤回しようとしたため、苦労した。トランプ大統領はその間、中国、北朝鮮、ロシアの機嫌をとろうとしていた」
「トランプ大統領は在任中、日本との安全保障条約を撤廃するとか、韓国の駐留米軍をすべて撤退させると脅していた。米日、米韓の同盟関係はいずれも大きく揺らいだ。だからバイデン政権下でこの新たな3国合意により米日韓の安全保障協力を揺るぎなくすることが望まれるのだ」
▲写真 フルトン郡刑務所に出頭した後、アトランタ・ハーツフィールド・ジャクソン国際空港で記者に向かって話すトランプ前大統領(2023年8月24日、ジョージア州アトランタ)出典:Photo by Joe Raedle/Getty Images
さて以上のような「解説」ではまずトランプ政権時代の日本との同盟関係が揺らいだというのは事実に反する。安倍首相とトランプ大統領の親密な関係に基づく日米関係はきわめて強固だったのだ。ただし韓国は文在寅大統領が北朝鮮寄りの姿勢を保ってことにトランプ政権は反発して、確かに米韓両国間に距離が生まれたことは否定できない。しかし在韓米軍を全面撤退するなどという政策はトランプ政権は示唆さえしなかった。トランプ政権の国家防衛戦略には在韓米軍28500人を現水準のまま保つという政策の堅持が明記されていたのだ。
トランプ政権が中国や北朝鮮、ロシアに機嫌をとるような宥和政策をとったと断じるのも事実に反する。とくに中国に対してはトランプ政権は歴史を変えるような強硬な対決政策をとり、それまで歴代政権の対中関与政策は失敗だったと宣言したのだ。北朝鮮に対してもトランプ政権は「炎と怒り」と題する軍事攻撃の意図をも表明していた。
しかしこのニューヨーク・タイムズの記事はそんな事実とは異なる前提に立って、第2次トランプ政権が変えることのできない強固な米日韓3国の絆をいま固めておこう、というのである。さらに異様なのはこの時点で2024年の大統領選挙ではトランプ氏が再選される恐れが高いという前提をもとっているのだ。
これはやはり過剰反応だといえよう。ニューヨーク・タイムズはそれほどトランプ氏が怖いのか、という疑問までが浮かんでくる。
トップ写真:キャンプデービッドでの日米韓三首脳会議後の共同記者会見 (2023年8月18日、米メリーランド州)出典:Photo by Chip Somodevilla/Getty Images
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