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権力者をなぜ抑制できなかった?~ジャニーズ問題はメディア問題【日本経済をターンアラウンドする!】その14

Japan In-depth / 2023年9月20日 19時0分

そうするとテレビ局の1ディレクターの立場になってみても、「ジャニーズのタレントを使わない」という選択を取れないのは仕方ない(そこで歯向かえば自分のキャリアを失ってしまう)。ジャニーズ事務所の圧倒的なプレゼンスを前に、テレビメディアとしてはそうせざるを得なかった、それどころか、その要求に従うしかない。このことを批判する人もいるだろうが、普通の担当者や経営幹部はそうした選択をとれない。それは企業の社員にしか過ぎないからだ。


改めて指摘し、批判し、立ち上がったとしても、よほど周りを巻き込まないと「変な奴」「正論いうやつ」とライバルからレッテルを張られるかもしれない。ジャニーズタレント以外の選択肢をとるのなら、それ相当のタレントを代替え策として用意しないといけないが、それも大変な作業になる。


こうして担当者は諦めることになる。ジャニーズさんもタレントは素敵な人たちだし、頑張ってくれるし、ま、いいか~と自分を納得させる。法律やルールで「おかしい」という正義が「(メディアの)村社会」の「空気」によって封殺される瞬間である。


 


□伝えないメディア、ジャーナリズム


しかし、報道は別である。行動できなかったわけなので、今からでも反省するべきところだろう。


東京高裁平成15年(2003年)7月15日判決、最高裁平成16年(2004年)2月24日決定に対して何を報道したのか、検証しなかった理由を各メディアは明確に説明するべきだろう。性被害者に取材をしただろうけど、それが使えないと判断したのはなぜか。その時にどのような圧力があったのか。報道局内部でどのような議論が行われ、管理職がどういう判断をして、経営陣がどういう判断をして決断に至ったのか。いわゆる意思決定過程を検証するべきだろう。


大手メディアの報道のためにも敢えて厳しい意見を言っているのは、単なる批判をしたいわけだからではない。メディアの機能は権力の監視であり、監視の結果を希少な電波で放映できる特権の持ち主だからだ。当時の報道記者がジャニーズのような圧倒的な権力に立ち向かうという選択は、調査報道が根付いていない日本では難しいことはわかっている。先ほどの述べたようなディレクターと同じような状況だからだ。


しかし、時代は変わった。検証をしない限り、大手メディアの報道の評価は下がる一方になってしまう。国民は皆、そのことに気づいいている。


 


□メディア自ら検証を


権力をもった人や著名人はその裁判結果やそこでの発言が事実認定されても、世の中には伝わらない。ネットメディアが現在より発展しなかった当時は余計にそうであろう。ジャニーさんの問題はある意味メディア問題であり、日本社会の組織の問題と言える。週刊文春裁判結審時のメディアの社長さんたち、報道局長さんなど、自分から告白する、語りだす勇気のある人はいないのだろうか?


メディア人としての矜持に期待したい。


トップ写真:脳梗塞で87歳で死去したジャニー喜多川氏の映像を映し出す大型スクリーンの前を歩く歩行者(2019年7月10日・東京)


出典:Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images


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