中国、地下鉄建設ほとんど赤字
Japan In-depth / 2023年9月21日 21時0分
交通運輸部のデータによると、2023年7月現在、全国54の都市で(トラム等を含む)軌道鉄道を開通・運行しており、総走行距離は9743.5kmである。
ただ、地下鉄敷設は軌道交通施設の中で最もコストが高い。建設費用として、㎞当たり8億~10億元(約160億円〜約200億円)もかかる。
例えば、北京地下鉄16号線の全長は49.8kmで、概算での総投資額は600億元(約1兆2000億円)で、㎞当たり12億元(約240億円)と見積もられている。
昨年開示された32都市の財務報告データでは(補助金を除き)武漢市、深圳市、済南市、上海市、常州市5都市の地下鉄だけがプラスで、残りは皆、赤字である。
また、各地の地下鉄運営は主に財政補助金に頼っている。昨年、その依存度が高かったのは杭州市、重慶市、鄭州市、青島市の順で、50億元(約1000億円)以上だった。そのため、多くの都市は人口規模や地方財政収入が少なく、地下鉄を建設しても、維持するのは難しい。
最近、大都市の深圳市、杭州市、成都市、南京市等でさえも、地下鉄計画が縮小した。特に、ここ3年間、習政権は「ゼロコロナ政策」を実施し、地方政府はその防疫費用で財政が疲弊している。
だが、一方では、別の見方も存在する。そもそも地下鉄敷設は営利目的ではなく、公共の福祉向上(d)にある。大都市の交通システムを改善し、地上の交通渋滞を緩和するためである。したがって、必ずしも採算が合わなくても構わないのではないかという。
確かに、地下鉄建設は都市を拡大し、地下鉄周辺の住宅価格を引き上げ、土地利権など他の収入を押し上げる。また、景気対策にもなるだろう。
ただ、2018年、当局の「都市鉄道輸送の計画・建設・管理の更なる強化に関する意見」では、地下鉄建設は、都市の一般財政予算収入が300億元(約6000億円)以上、地域総生産が3000億元(約6兆円)以上、都市住民人口が300万人以上と規定されている。
同時に、開業から3年後には、乗客数が基準(1kmで1日当たり7000人)を満たさない場合は、新たな建設計画を申請できない。
1・2線の大都市ならば地下鉄の敷設は可能だが、3・4線の地方都市では難しいだろう。採算の取れない地下鉄計画の敷居はますます高くなっている。
〔注〕
(a)『中国瞭望』「習近平は西側の『福祉主義』を恐れており、無策のリスクは非常に大きい」(2023年8月30日付)
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